講演情報

[PD1-6]当院の便失禁診療の現状と課題 特に仙骨神経刺激療法SNMの成績について

岡本 亮1,2,3, 松木 豪志1,2, 一瀬 規子1,2, 古出 隆大1, 中島 善隆1, 仲本 嘉彦1, 柳 秀憲1 (1.医療法人信和会明和病院骨盤底機能・臓器脱センター, 2.医療法人信和会明和病院外科, 3.公益社団法人京都保健会京都民医連中央病院)
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【はじめに】本邦では500万人以上の便失禁患者がいるとされるが、一方でその4分の3が受診をしていないとされている。当院は2015年から排便機能外来を開設しており、広く排便に纏わるお困り事を受け入れるよう心がけている。便失禁については近隣開業医師への治療法についての案内や地域無料コミュニティー新聞への投稿などを通して地域住民への案内も積極的に行い治療により改善の可能性のある病態である事をアピールしている。結果当外来の40%程度が便失禁を主訴に来院されている。今回当院の便失禁診療の現状、特に仙骨神経刺激療法SNMの成績と課題について報告する。
【対象と方法】診療はまず併存疾患の確認を含めた詳細な問診に加え、直腸肛門内圧検査や排便造影検査、動的骨盤MRIなどを行い病因の精査と患者への病態の見える化に努める。治療は初期段階で薬物療法や運動療法について70%程度の改善率と共に伝え、更に仙骨神経刺激療法SNMも含めた手術治療、また再生医療の可能性についても言及している。その後ほぼ全例に薬物治療行い、60%以上の症例で3ヶ月程度の骨盤底筋群体操をバイオフィードバック療法外来にて行っている。無効例に於いてはSNMを提案し、2015年の初例から現在まで63例を実施してきた。
【結果】年齢中央値は68歳で、男女比は1対1、1例のみ先行して肛門括約筋形成術を行っている。45%が後期高齢者であり術前に認知機能検査や介護家族の負担度の評価なども行い適応を判断している。9割以上が漏出性で原因疾患内訳では特発性が4割と最も多く、ついでLARS、直腸脱術後、脊椎疾患術後、潰瘍性大腸炎術後となっている。63例中62例に対して留置を行い、経過中感染症で7例、疼痛で1例が抜去となった。周術期に大きな合併症は認めず、半年後の評価では77.5%の症例で失禁が半分以下に改善し、21.0%で完全禁制が得られていた。
【考察と結語】便失禁に対するSNMは高齢者を含め安全に行え治療効果も良好であり、保存的治療が無効であった症例の有力な治療法となり得ると考えられた。一方病納期間中央値はまだ3年超となっており、より早期の治療に結びつける工夫が必要と考えられた。