講演情報
[PD1-7]便失禁に対する仙骨神経刺激療法 (sacral neuromodulation : SNM)の短期および長期予後
鶴間 哲弘, 西舘 敏彦, 田山 慶子, 石村 陸, 平田 公一 (JR札幌病院外科)
(はじめに)便失禁に対するSNMは本邦では2014年4月に保険収載され、それ以降実臨床で施行されている。骨盤底機能障害全体では、全世界で約34.5万例(2021年4月時点)にSNMが施行されている。それに伴い、欧米での便失禁に対するSNMの短期および長期的成績の報告が増えている。(目的)当施設でも2014年12月から便失禁に対するSNMを開始し、2025年3月までに80例にリード植え込み術を施行。当科での短期および長期成績を検討し諸外国からの報告と比較検討する。(方法)SNMの手術は2段階に分かれている。1回目の手術で刺激リードをS3神経近傍に留置。その後、約2週間の試験刺激期間後、2回目の手術で神経刺激装置を植込むか、あるいは、リード抜去し手術前の状態に戻す。神経刺激装置植込み後は、約3か月毎に刺激装置~リードの状況の確認と便失禁の状況をfollowする。(結果)80例(男/女:55/25人、平均年齢66.8歳)にリード植込み術を施行し、約2週間の試験刺激後、SNM無効と判断した5例と試験刺激中に感染を生じた1例、計6例でリード抜去術を施行。残り74例に神経刺激装置を植込んだ。その後、効果無効や患者希望によりリード抜去した症例や高齢化に伴う施設入所等によるfollow-up中断例を除外し、リード留置1年後に評価しえた症例は62例、5年後に評価しえた症例は32例であった。SNM施行以前と比較し便失禁回数が50%以上減少した症例を有効例、便失禁がゼロになった症例を寛解例とすると、1年後の評価では有効例52例(83.9%)でそのうち寛解例18例(29.0%)であった。5年後の評価では有効例25例(78.1%)でそのうち寛解例8例(25%)であった。(考察)米国の臨床試験では、刺激装置が埋め込まれた120例のうち1年後に評価できた106例での有効例は88例(83%)で、43例(41%)では寛解が得られた(Ann Surg 2010; 251: 441-449)。当科でのSNM成績は他国からの報告同様、短期的にも長期的にも良好であった。とりわけ、1年後の有効率は欧米の臨床試験結果とほぼ同等であった。