講演情報
[PD3-10]クローン病、肛門病変に対するダルバドストロセルの効果
内野 基1, 堀尾 勇規1, 桑原 隆一1, 楠 蔵人1, 長野 健太郎1, 友尾 祐介1, 野村 和徳1, 木村 慶2, 孫 知亨2, 今田 絢子2, 伊藤 一真2, 福本 結子2, 木場 瑞貴2, 片岡 幸三2, 池田 正孝2, 池内 浩基1 (1.兵庫医科大学消化器外科炎症性腸疾患外科, 2.兵庫医科大学消化器外科学講座下部消化管外科)
【はじめに】クローン病肛門部瘻孔に対し脂肪幹細胞(ダルバドストロセル)注入を用いた治療法が行われるようになった。欧米の介入試験では有効性が検証できずに使用が中止となっているが本邦での使用は継続となっている。今回、自験例での状況、経過を報告し、今後の展望、問題点について考察する。【方法】当院で2025年4月までにダルバドストロセルの投与を行った症例の背景、併存治療内容、術後経過について後方視的に検討した。痔瘻の治癒は用指的圧迫でも排液が消失したもの、再燃は排液を伴う瘻管の開放とした。複合寛解は臨床的寛解に加えてMRIでの膿瘍消失とした。【結果】15例にダルバドストロセル投与を行っていた。男女比=8:7、年齢33±8.6歳。痔瘻は原発口1か所が13例、2か所が2例、二次口は1か所10例、2か所例5であった。全例肛門管の狭窄はなしまたは軽度で原発口の縫合閉鎖が可能である症例でありⅡL型または単純なⅢ型であった。併存治療はアダリムマブ、インフリキシマブ、ウステキヌマブであり、アダリムマブ治療中止し併存治療なく1年後に再燃した1例が含まれていた。手術からの経過観察期間は15.8±17.1か月であった。術後3-4週では11例で排液の消失を認めたが4例で硬結の残存があった。残る4例では排液の持続を認めた。24週経過観察可能な13例では7例が排液消失、6例が排液を認めた。54週以上経過観察可能であった症例は9例で4例が排液消失維持、5例が排液持続している。早期に硬結を有するまたは排液を有する症例でもメトロニダゾールの併用により排液消失となる例も見られたが、長期的には6/8例が再燃した。しかし再燃症例の多くは、排液が時にあるものの、QOL低下することなく経過している。副作用は認めなかった。【結語】狭窄がなく低位の単純な肛門病変に対してダルバドストロセルの治療が行われていた。多くは術後早期に症状消失するようだが、残存の可能性がある症例でもその後の経過とともに軽快する症例もみられた。しかし早期に軽快しない場合には長期維持が困難である可能性も示唆された。今後も更なる長期経過での効果を評価する必要がある。