講演情報

[PD3-12]クローン病患者における直腸肛門管腫瘍の臨床的特徴の解析

重原 光那, 杉本 真也, 吉松 裕介, 清原 裕貴, 三上 洋平, 金井 隆典 (慶應義塾大学医学部内科学(消化器))
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【背景】クローン病(Crohn’s Disease;以下、CD)は一般人口に比べて大腸癌合併リスクが高い。日本人CDでは肛門病変の頻度が高く、大腸の左側、特に直腸および肛門管に腫瘍が発生することが多い。炎症性腸疾患に関連する大腸癌患者は予後が悪いとされており、適切なサーベイランスによる早期診断が望ましいが、CDではサーベイランス法の確立が不十分なのが現状である。今回、直腸肛門管腫瘍を合併したCD患者を評価し、その臨床的特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】2014年5月~2025年4月までに当院通院歴のあるCD患者のうち、CD関連腫瘍を合併した24例を対象とし、その中で直腸肛門管領域に癌またはdysplasiaを認めた症例を詳細に解析した。対象症例の背景因子、診断契機、診断時の腫瘍マーカー、画像所見について後方視的に検討した。
【結果】直腸肛門管移行部に腫瘍を認めたのは20例であった。CD発症年齢中央値は23(17-26.3)歳で、男性が13例、病型はL1 0例、L2 3例、L3 17例で、全例で肛門病変を認めた。腫瘍診断時の年齢中央値は45.5(41-53.5)歳であり、発症から腫瘍診断までの罹病期間中央値は258(180-405)月(21.5年)であった。診断契機は13例が血便や肛門痛等の自覚症状であり、サーベイランスでの発見は7例にとどまったが、サーベイランス例はいずれもStage II以下で診断された。診断時、CEAは7例、CA19-9は5例で陽性であった。診断前後3ヶ月以内にMRおよびCTで評価された各19例のうち、MRで9例、CTで8例は原発巣を同定できなかった。
【結論】サーベイランス診断群は比較的早期に診断できている一方で、MRIやCTでは原発巣を検出できないことも多い。内視鏡的サーベイランスの重要性は高く、特に肛門病変を有するCD患者においては、直腸肛門管癌の早期発見を目的とした積極的な実施が望まれる。