講演情報
[PD3-7]クローン病に合併する痔瘻に対する根治手術例の検討-生物学的製剤の効果も含めて-
栗原 浩幸, 金井 忠男, 赤瀬 崇嘉, 藤井 頼孝, 森山 穂高, 塚原 勇 (所沢肛門病院)
【はじめに】これまでクローン病(以下,CD)に合併する痔瘻については,手術を行うと再発,治癒遷延,手術創の拡大などの危惧から,根治手術ではなくseton法にとどめるという考えが主体であった.2023年われわれはCD痔瘻であっても手術適応を厳格に守り適切な手術を行えば根治手術が可能であることを発表した(日本大腸肛門病会誌 76:136-145, 2023).今回,症例を追加し再検討を行ったので報告する.【対象・方法】2010~2023年に痔瘻根治手術を行い治癒または非治癒まで経過を追えた症例でCDの確定診断がついた症例61例(CD手術例)と2014~2015年までにCDでない痔瘻に対し根治手術を行い治癒まで経過を追えた119例(非CD手術例)を対象とした.それぞれの性別,年齢,痔瘻の数,治癒率,平均治癒期間について検討した.またCD手術例について生物学的製剤(以下,bio)使用の有無について治癒期間を検討した.【結果】非CD手術例とCD手術例の性別はそれぞれ,男性100例(84%),55例(90%)で有意差を認めなかった.年齢は43.9(mean)±13.1(SD)歳,25.8±9.5歳(p<0.001)でありCD手術例が有意に若年であった.痔瘻の数1.1±0.2,1.6±0.7(p<0.001)で,CD手術例では多発例が28/61例(45.9%)と有意に多かった.治癒率は非CD手術例119/119例(100%),60/61(98.3%)であり,CD手術例でも100%近く治癒していた.ただし平均治癒期間は64.9±35.4日, 129.3±78.5日(p<0.001)であり,CD手術例が非CD手術例の2倍くらいの時間を要した.CD手術例のうち,痔瘻治癒までbioを使用しなかった症例は48例,術前あるいは術後早期からbioを使用した症例は11例であった.bio非使用例48例と使用例11例の治癒率はいずれも100%であった.平均治癒期間は138.3±82.1日,81.4±29.0日(p<0.001)でありbio 使用例が有意に治癒期間が短かった.非CD手術例とCD手術例でbio使用群との治癒期間の比較では,bio使用群でやや長かったものの有意差を認めなかった.【結論】CD痔瘻でも手術適応を厳格に守り適切な手術を行えば根治手術可能である.またbioを使用することにより,根治手術後の治癒期間の短縮が図られることが示された.