講演情報
[PD3-8]クローン病に合併した低位及び高位痔瘻に対する根治術
下山 貴寛, 梅枝 覚, 大谷 暉, 西川 隆太郎, 堀 智英, 中山 茂樹, 岩永 孝雄, 山本 隆行 (四日市羽津医療センター)
痔瘻の診断は多くの症例ではcryptoglandular infectionsに伴い発生することから、肛門診察にておおよその診断が可能である。しかしながら、高位の痔瘻の場合は超音波検査、CT検査、MRI検査が必要となることがある。痔瘻治療の基本は原発口、原発巣、痔瘻管の全切除であるが、より低侵襲を目指して、さまざまな術式が行われている。しかしながら、Ⅲ型Ⅳ型痔瘻などの高位痔瘻においては、肛門機能を温存しながら、根治術を目指す治療は簡単ではない。1992年から2015年までに当院で行われた痔瘻根治術は2235例でⅠ型が18例0.8%、ⅡL型が1595例71.4%、ⅡH型が132例5.9%、Ⅲ型が436例19.5%、Ⅳ型が54例2.3%である。各々の再発率はⅠ型0例0%、ⅡL型20例1.57%、ⅡH型が3例2.27%、Ⅲ型9例2.06%、Ⅳ型3例5.56%、であった。再発症例を検討したところ、再発例は、原発口を切除できなかったか、温存閉鎖した症例が多く見られ、瘻管の残存が疑われた。この頃からMRI検査により痔瘻の詳細な立体的走行の把握が可能となったことから、2019年からは可能な限り全瘻菅を切除した上で機能温存の手術を行うこととした。2019年から2024年までに行われた痔瘻根治術は790例でⅠ型10例1.3%、ⅡL型が603例76.3%、ⅡH型が56例7.1%、Ⅲ型が106例13.4%、Ⅳ型が 15例1.9%でした。各々の再発率はⅠ型が0例0%、ⅡL型が7例1.11%、ⅡH型が1例1.79%、Ⅲ型が2例1.89%、Ⅳ型が1例6.67%であった。2015年までの痔瘻根治術と比較して、2019年以降の再発率はⅡL型、ⅡH型、Ⅲ型において再発の減少を認めた。当院ではクローン病に合併した低位及び高位痔瘻に対しても、内科的治療やシートン法を用いて、できる限り痔瘻を単純化した後に、MRI検査にて詳細な瘻管の走行を把握した上で、活動性の無いクローン病においては、原発口から原発巣、痔瘻菅の一括全瘻管切除を行っているので実際を報告する。