講演情報

[PD3-9]クローン病合併痔瘻に対する生物学的製剤、分子標的薬、再生医療の当院における成績と肛門科医としての役割

高野 正太 (大腸肛門病センター高野病院)
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【はじめに】クローン病に合併した痔瘻は根治手術の適応ではなく、ドレナージを行った後の各種薬物療法が行われるが、難渋する症例を多く経験する。今回は当院における生物学的製剤、分子標的薬、再生医療の治療成績を検討した。
【方法】2022年1月から2025年2月までに当院で上記治療を行った症例162例のうち痔瘻または肛門周囲膿瘍を認めた患者117例を対象とした。二次口が全て一旦閉鎖した症例を寛解、排液などの症状が軽減した症例を有効(寛解を含める)、一旦寛解したのちに排液や炎症を認めた症例を二次無効とした。
【結果】有効率、寛解率、寛解症例中の二次無効率はそれぞれインフリキシマブ(IFX)37例で72.4、34.4、10.3%、アダリムマブ(ADA)59例で、64.9、45.6、5.2%、ウステキヌマブ(UST)21例で42.1、26.3、5.8%、ベドリズマブ(VED)9例で83.3、66.4、14.2%、リサンキズマブ(RKZ)7例で42.8、28.5、0%、ウパダシチニブ(UPA)4例で75.0、25.0、0%であった。再生医療であるヒト脂肪組織由来幹細胞製剤のダルバドストロセル(INN)11例ではそれぞれ90.9、72.7、37.5%であった。
【まとめ】クローン病の肛門病変に対しては抗TNFα抗体以外のエビデンスが乏しかったため、今回の症例ではIFXとADAの使用が多く認められ、後半でUSTやVEDの症例が徐々に増加した。今回の検討ではVEDの寛解率とIFXの有効性が高い結果となった。ダルバドストロセルはほとんどの症例で有効であったが再発も多く認めた。またクローン病合併痔瘻の生活の質を表すCAFQOLは55.7から28.3へ有意差をもって改善している。
難治であるクローン病合併痔瘻に対して生物学的製剤、再生医療は高い寛解率および改善率を示し有効と考えられる。生物学的製剤の選択は内科的な作業となるが、肛門疾患に対する診断や処置に精通している肛門科医や外科医が積極的に介入し、内科医と協力すべきである。