講演情報
[PD4-1]潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘回腸嚢肛門管吻合術後の長期予後
後藤 晃紀1, 辰巳 健志1, 黒木 博介1, 中尾 詠一1, 小原 尚1, 木村 英明2, 齋藤 紗由美1, 荒井 勝彦1, 小金井 一隆1, 杉田 昭1 (1.横浜市立市民病院炎症性腸疾患科, 2.横浜市立大学附属市民総合医療センター炎症性腸疾患センター外科)
【背景】潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸全摘回腸嚢肛門管吻合術(IACA)は,術後のQOLを保ちうる標準的術式であるが,長期的な回腸嚢機能維持率や機能不全の要因に関する報告は限られている.
【目的】UCに対しIACAを施行した症例の,術後の長期予後を明らかにすることを目的とした.
【方法】1993年4月から2015年3月までに当科でIACAを施行したUC 993例のうち,術後10年以上の経過が観察可能であった696例を後方視的に解析した.術後合併症発生率,回腸嚢機能率,回腸嚢機能不全の原因,残存肛門管,吻合部,回腸嚢内の癌またはdysplasia発生率について検討を行った.
【結果】性別は男性403例(57.9%),女性293例(42.1%),UC発症時年齢は27(20-39)歳,病変範囲は全大腸炎型が652例(93.7%),左側大腸炎型が44例(6.3%)だった.手術時年齢は35(26-48)歳で,手術適応は難治が444例(63.8%),重症が226例(32.5%),癌またはdysplasiaが26例(3.7%)で,一期的手術が482例(69.3%),分割手術が214例(30.7%)だった.IACA施行時の合併症として,術後早期縫合不全は60例(8.6%)に発生し,19例(2.7%)で再手術を要した.その他,腸閉塞が68例(9.8%),表層SSIが 80例(11.5%),臓器・体腔SSI が39例(5.6%),消化管出血が16例(2.3%),腹腔内出血が6例(0.9%),肺炎が6例(0.9%)に発生した.術後観察期間は15.4(12.0-19.1)年であり,回腸嚢機能率は10年で97.1%,20年で91.0%だった.回腸嚢機能不全は56例(8.0%) に認め,主な原因は痔瘻19例(33.9%),晩期縫合不全14例(25%,うち吻合部膣瘻6例),回腸嚢炎 6例(10.7%)などであった.また,残存肛門管や吻合部,回腸嚢内に発生した癌またはdysplasiaを理由に回腸嚢切除を行った症例は7例(12.5%)だった. [中央値(四分位範囲)]
【結語】UCに対するIACA後の長期回腸嚢機能率は良好であった.一方で,回腸嚢機能不全の最多要因として痔瘻が挙げられ,術前・術後の肛門病変に対する適切な評価と対応が重要である.また,長期的には癌やdysplasiaの発生が少ないながらも認められるため,定期的なサーベイランスの必要性が示唆された.
【目的】UCに対しIACAを施行した症例の,術後の長期予後を明らかにすることを目的とした.
【方法】1993年4月から2015年3月までに当科でIACAを施行したUC 993例のうち,術後10年以上の経過が観察可能であった696例を後方視的に解析した.術後合併症発生率,回腸嚢機能率,回腸嚢機能不全の原因,残存肛門管,吻合部,回腸嚢内の癌またはdysplasia発生率について検討を行った.
【結果】性別は男性403例(57.9%),女性293例(42.1%),UC発症時年齢は27(20-39)歳,病変範囲は全大腸炎型が652例(93.7%),左側大腸炎型が44例(6.3%)だった.手術時年齢は35(26-48)歳で,手術適応は難治が444例(63.8%),重症が226例(32.5%),癌またはdysplasiaが26例(3.7%)で,一期的手術が482例(69.3%),分割手術が214例(30.7%)だった.IACA施行時の合併症として,術後早期縫合不全は60例(8.6%)に発生し,19例(2.7%)で再手術を要した.その他,腸閉塞が68例(9.8%),表層SSIが 80例(11.5%),臓器・体腔SSI が39例(5.6%),消化管出血が16例(2.3%),腹腔内出血が6例(0.9%),肺炎が6例(0.9%)に発生した.術後観察期間は15.4(12.0-19.1)年であり,回腸嚢機能率は10年で97.1%,20年で91.0%だった.回腸嚢機能不全は56例(8.0%) に認め,主な原因は痔瘻19例(33.9%),晩期縫合不全14例(25%,うち吻合部膣瘻6例),回腸嚢炎 6例(10.7%)などであった.また,残存肛門管や吻合部,回腸嚢内に発生した癌またはdysplasiaを理由に回腸嚢切除を行った症例は7例(12.5%)だった. [中央値(四分位範囲)]
【結語】UCに対するIACA後の長期回腸嚢機能率は良好であった.一方で,回腸嚢機能不全の最多要因として痔瘻が挙げられ,術前・術後の肛門病変に対する適切な評価と対応が重要である.また,長期的には癌やdysplasiaの発生が少ないながらも認められるため,定期的なサーベイランスの必要性が示唆された.