講演情報

[PD4-3]潰瘍性大腸炎手術症例における内臓肥満と回腸嚢の到達性の検討: 前向き単一施設研究

堀尾 勇規1, 内野 基1, 友尾 祐介1, 野村 和徳1, 木場 瑞貴2, 福本 結子2, 長野 健太郎1, 伊藤 一真2, 今田 絢子2, 楠 蔵人1, 宋 智亨2, 桑原 隆一1, 木村 慶2, 片岡 幸三2, 池田 正孝2, 池内 浩基1 (1.兵庫医科大学病院炎症性腸疾患外科, 2.兵庫医科大学病院下部消化管外科)
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【目的】潰瘍性大腸炎(UC)手術症例において、肥満は大腸全摘術・回腸嚢肛門吻合(IPAA)を行う際の技術的困難リスクを高めることが報告されている。今回、IPAAにおける内臓脂肪と回腸嚢の到達可能性との関連を前向きに検討することを目的とした。
【対象】2017年4月から2024年10月までの間に当科にて2期分割のIPAAを受ける予定としたUC患者を登録した。恥骨結節下縁の指標を用いて、術中に回腸嚢肛門管吻合術(IACA)へ変更が必要であった群を転換手術群と定義した。内臓脂肪面積と様々な解剖学的指標を術前CTを用いて測定し、多変量解析にて転換手術の予測因子を同定した。
【結果】計106例の患者が対象となり、12例(11.3%)がIACAへの転換手術群であった。非転換手術群の患者と比較して、転換手術群では、Body Mass Index(BMI)が有意に高く(p < 0.01)、内臓脂肪面積が有意に高く(p < 0.01)、回腸末端から肛門縁までの距離が有意に長かった(p < 0.01)。年齢、重症度、病悩期間、術前内科治療、腹腔鏡手術などの臨床学的背景因子に関しては2群間で有意差を認めなかった。多変量解析では、内臓脂肪面積(10cm2増加あたり:オッズ比[OR]: 1.19、95%信頼区間[CI]: 1.02-1.39、p = 0.01)が転換手術の独立した予測因子として同定されたが、BMIは同定されなかった(OR: 1.03、95%CI: 0.77-1.21、p = 0.72)。
【結語】内臓脂肪は、IPAAを受けた患者における転換手術の独立した危険因子であった。CTを用いた術前の内臓脂肪測定は、BMIよりも回腸嚢の到達可能性をより正確に予測できる可能性がある。