講演情報

[PD4-4]潰瘍性大腸炎(UC)に対する回腸嚢肛門管吻合(IACA)における縫合不全予防の工夫と対策後の臨床病理学的評価

杉山 洸裕1, 高木 徹1, 岩瀬 友哉1, 立田 協太1, 赤井 俊也1, 美甘 麻裕1, 深澤 貴子2, 竹内 裕也1 (1.浜松医科大学, 2.磐田市立総合病院)
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【背景】癌を合併しない潰瘍性大腸炎(UC)では、肛門機能温存の観点から大腸全摘回腸嚢肛門管吻合(IACA)の2期分割手術を第一選択とし、残存粘膜を最小にするためDST吻合部は歯状線より2cm以下を目標としている。IACAでは残存粘膜の脆弱性とStaple交点が縫合不全のリスクと考えられ、2010年より縫合不全予防策としてDST吻合部の経肛門的観察・補強を開始した。予防策前後の治療成績と予防策後の臨床病理学的評価について報告する。
【方法】2000~2024年のUCへの大腸全摘IACA67例について経肛門的補強非導入群26例、導入群41例の患者背景、手術成績を検討した。導入群は全例が腹腔鏡手術で、気腹によりDST吻合部のAir leakageの有無は経肛門的観察が容易であった。経肛門的観察時にAir leakageを認めた症例(L例)はStaple交点を含む全周を補強、Air leakageを認めなかった症例(NL例)はStaple交点のみ補強した。また、切除腸管の肛門側断端2cmの組織学的所見を比較検討した。
【結果】患者背景は平均年齢38歳、男性45例、2期分割手術:3期分割手術が非導入群21:5例、導入群28:13例であった。縫合不全は非導入群で5例(19.2%)、導入群では0例(0%)であった。導入群は手術時間が延長、出血量が減少していた。導入群においてNL例は25例、L例は16例で、平均手術年齢はNL例43歳、L例30歳とL例は若年であった。術前血液検査結果および術前内科治療、縫合不全以外の合併症率に差はなかった。組織学的評価は28例に実施でき、粘膜~固有筋層・粘膜全層・粘膜筋板の厚さの平均値(NL例:L例)は2306:1842nm・710:366nm・171:82nmと粘膜全層、粘膜筋板が薄かった。
【考察】大腸全摘における縫合不全はPervic sepsisに伴い肛門機能低下を来すため、発症時の重篤さに加え、長期的にも影響を与える重大な合併症である。当科では予防策導入に伴い、縫合不全率は低下した。一方で、L例は39%と高頻度であった。L例は粘膜も菲薄化しており、炎症や手術操作に伴う直腸残存粘膜の脆弱化を示唆していた。IACA時の吻合部の経肛門的確認と吻合組織の脆弱性に応じた補強は縫合不全の発症予防に有用と考える。