講演情報

[PD4-5]潰瘍性大腸炎に対する体腔内J型回腸嚢作成を伴う一期的腹腔鏡下大腸全摘術の経験と展望について

岡林 剛史, 門野 政義, 森田 覚, 茂田 浩平, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
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目的:開腹大腸全摘術では症例を選択した上で一期的手術も行われていたが、腹腔鏡下大腸全摘術は人工肛門造設した上で二期的に行われることが多い。そのため、腹腔鏡下大腸全摘術における一期的手術の報告は少ない。大腸全摘術では直腸の切離を行うため、検体を経肛門的に摘出することができ、検体摘出のために腹部に目立つ創を作る必要はない。J型回腸嚢を体腔内で作成することの技術的困難性を克服できれば、一期的で創を最小化した腹腔鏡下大腸全摘術を行うことができる。われわれは、2022年から症例を選択した上で、体腔内J型回腸嚢作成を伴う一期的腹腔鏡下大腸全摘術を行っており、その経験と今後の展望について報告する。
方法:2022年6月から2025年4月の間に体腔内J型回腸嚢作成を伴う一期的腹腔鏡下大腸全摘術を施行した患者21例を対象とし、本術式の手術成績について後方視的に検討を行った。手術手順および術後管理は以下のとおりである。①腹腔鏡下手術で結腸全摘術、腹腔鏡下手術と経肛門的鏡視下手術を併用して直腸切除術を行う。②回腸末端を体腔内で切離する。③体腔内でJ型回腸嚢を作成する。④肛門(管)と回腸嚢を吻合する。⑤左下腹部の人工肛門作成予定部にペンローズドレーンを用いてghost ileostomyを作成し、その口側まで経肛門的にイレウス管を挿入してバルーンに注水し、腸管減圧を行う。
結果:21例の内訳は男性13例、女性8例であり、平均年齢は47.5±11.0歳であった。本術式は緊急手術を要する場合には適応外としており、手術適応は内科治療不応例が1例、20例は潰瘍性大腸炎関連腫瘍であった。平均手術時間は502±57分、平均出血量は97±84gであった。CD分類IIIa以上の術後合併症を4例に認め、うち2例は不安定な肛門吻合に生じた縫合不全であった。2024年から吻合に不安がある場合には人工肛門造設を行う方針とし、その後は縫合不全は認めていない。
結語:体腔内J型回腸嚢作成を伴う一期的腹腔鏡下大腸全摘術は適切な症例選択を行えば、安全に施行可能な手術と考えられた。極めて高い整容性と人工肛門のストレスから解放される本術式の更なる改善と症例の集積が必要と考えられた。