講演情報

[PD4-8]当科におけるクローン病に対する三角吻合の短期成績

大北 喜基1, 志村 匡信1, 山下 真司1, 今岡 裕基1, 北嶋 貴仁2, 川村 幹雄1, 松下 航平1, 小池 勇樹1, 奧川 喜永2, 安田 裕美1, 小林 美奈子3, 吉山 繁幸1, 大井 正貴1, 問山 裕二1 (1.三重大学消化管・小児外科, 2.三重大学病院ゲノム医療部, 3.三重大学先端的外科技術開発学)
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【背景】クローン病(CD)に対する手術では, 術後の治療方針決定や再手術のリスク評価のため, 術後6から12か月ヵ月後の吻合部に対する内視鏡評価が推奨されている.三角吻合は,linear staplerを3回用いた簡便な器械吻合であり,生理的な端端吻合であることにより術後の内視鏡挿入が容易になることが期待できる.当科では2021年3月より導入し,直腸吻合以外の吻合において三角吻合を標準吻合法としている.
【方法】対象は2021年3月から2024年12月までに当科でCDに対して吻合を行った症例54例中,三角吻合を施行した症例42例とした.これらの症例の背景および短期成績について検討した.
【結果】女性32例,男性10例,手術時年齢中央値37 (14-71) 歳,発症年齢中央値25(6-57) 歳,病悩期間中央値11年(0-33年)であった.Montreal分類はA1: 7例, A2; 31例, A3; 4例, L1: 23例, L2: 1例 L3: 18例, L4: 5例 ,B1:3例, B2: 21例, B3:18例であった.術直前治療薬は,ステロイド2例 ,免疫調節薬13例,生物学的製剤32例で,開腹手術歴は26例にみられた.腹腔鏡は24例に使用され,吻合は小腸小腸吻合15例,小腸結腸吻合25例, 結腸結腸2例で,吻合個数2か所5例,1か所37例で合計47か所に三角吻合が施行された.手術時間中央値218(133-439)分,出血量中央値153 (1-1336)mlで,術後腸腰筋膿瘍の再発が認められたものの,それ以外の外科手術部位感染や縫合不全または吻合部出血といった短期の吻合部合併症は認められなかった.術後再燃予防のための生物学的製剤は32例(免疫調節剤併用8例)に用いられ,生物学的製剤非使用例は10例であった.術後6-18か月で吻合部評価のための内視鏡を施行した症例29のうち,吻合部観察できたのは23例で, Rutgeertsスコア2a以上の内視鏡再発は8例(34.8%)に認められた.術後観察期間中央値19.3(4.9-47.9)月で臨床的再発,外科的再発は認められなかった.
【結論】CDに対する三角吻合において短期の吻合部合併症は認められなかった。本邦の多施設共同研究によるCD術後内視鏡的再発を評価した研究と比較しても三角吻合の内視鏡的再発率は遜色なく、許容される吻合法と考えられた.