講演情報
[PD5-5]クローン病関連大腸腫瘍の診断と治療:治療成績向上に向けた課題
高橋 賢一1,3, 羽根田 祥1,3, 白木 学2,3, 枡 悠太郎2,3, 成島 陽一4, 松村 直樹4, 野村 良平4, 田中 直樹4, 斎藤 匠4, 佐藤 馨4, 添田 敏寛4, 笹川 佳樹4, 徳村 弘実4 (1.東北労災病院大腸肛門外科, 2.東北労災病院消化器内科, 3.東北労災病院炎症性腸疾患センター, 4.東北労災病院外科)
【目的】クローン病(CD)関連大腸腫瘍の診断と治療の現状および課題を明らかとするため、当院で経験したCD関連大腸腫瘍について検討を行った。【方法】2007年~2024年までに当院で経験したCD関連大腸腫瘍14例を対象とし、診断の経緯、進行度、治療成績について後ろ向きに検討した。【結果】男性10例、女性4例、年齢は30~60代。腫瘍診断までのCD罹病期間は1年10ヶ月から34年で、11例が10年以上であった。直腸肛門管腫瘍13例、上行結腸癌1例であった。7例で直腸肛門部のサーベイランスが行われていた。直腸肛門管腫瘍の13例に限りサーベイランスの有無別に進行度を検討した。サーベイランス未施行例ではStage I:1例、II:2例、III:1例、IV:2例であったが、サーベイランス施行例では、high grade dysplasia(HGD) 1例、Stage I:2例、II:3例、IV:1例であった。サーベイランス施行例でのStage IVは、前回サーベイランスから2年後のサーベイランスが予定されるも、1年10ヶ月目に腰痛を契機に精査し、骨転移が判明した症例であった。HGD症例とStage I の4例、Stage IIの4例ではいずれも根治切除が行われ、右半結腸切除が1例、Miles手術が8例であった(膣後壁合併切除、前立腺合併切除各1例含む)。全例が無再発生存であった(術後観察期間1~11年)。一方Miles 手術を行ったStage III 1例、骨盤内臓全摘術を行ったStage IVの2例とストーマ造設+化学放射線療法を行ったStage IVの1例、および積極的治療拒否のStage II 1例の計5例はいずれも癌死した(術後生存期間0.5~3年)。【結語】CD関連大腸腫瘍の治療成績向上のためには、Stage IIまでの早い病期での診断の重要性が示唆された。直腸肛門部のサーベイランスは早い病期での診断に有用である可能性が示唆されたが、早期癌での診断は未だ困難と考えられた。また適切なサーベイランス実施間隔の設定が課題と考えられた。