講演情報

[PD5-7]クローン病に合併した小腸癌の現状と課題

西尾 梨沙, 新谷 裕美子, 井上 英美, 大城 泰平, 古川 聡美, 岡本 欣也, 山名 哲郎 (JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター)
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はじめに:クローン病(CD)は腸管の慢性炎症を背景としてまれに癌化することが知られている.本邦では直腸肛門管癌が多くを占めこれまでに多数報告されているが, 小腸癌合併は比較的まれでありその診断や治療, 予後はまだ確率されていない. 今回CDに合併した小腸癌治療の現状と課題を明らかにすべく, 当院で経験した症例について検討した.
対象と方法:2011年1月から2024年12月までに当院で手術を施行したCDに合併した小腸癌20例を対象に, 患者背景, 診断方法, 病理組織学的特徴, 治療, 予後について後方視的に検討した.
結果:性別は男性15例, 女性5例, 小腸癌診断時の平均年齢は50.7歳, CD発症から小腸癌診断までの病脳期間は21.9年, 手術要因は狭窄15例, 瘻孔3例, 癌2例で, 病変部位は全て回腸であった. 他臓器と瘻孔を形成した症例は3例で, うち1例は瘻孔部に癌を認めた. 小腸癌の診断は術前2例, 術中1例, 術後17例で, 手術は19例で病変部が切除され, 1例は切除不能であった. 転移については2例で手術時に腹膜播種を認め, うち1例は多発肝転移も同時に認めた. 切除された19例のうち1例は3か所に病変があり, 全体で22病変が診断された. 術後に癌が診断された17例中14例は複数または広範囲の狭窄があり, そのうち10例では狭窄病変の中央付近に癌を認めた. 肉眼型の内訳は5型10病変, 0型4病変, 3型3病変, 4型1病変, 潰瘍1病変, 不明3病変, 組織型はtub1:12病変, tub2:5病変, por:3病変, sig:1病変, NET:1病変, 壁深達度はTis+1:7病変, T2:3病変, T3:6病変, T4:5病変, 切除不能:1病変であった. 術後フォローアップにおいて15例は再発・転移なく経過していた. 経過中5例に大腸癌の合併(同時性2例, 異時性3例)を認めた.
考察:CD合併小腸癌は複数の狭窄や長い狭窄病変の中心部に病変を認める症例が多く, 術前の内視鏡検査による癌の診断は困難である.予後は比較的良好であるが, 同時性・異時性に大腸癌を発症することもあり,癌の発症を念頭においた慎重なサーベイランスが必要と考えられた.