講演情報

[PD6-2]下部直腸癌における側方郭清適応の最適化 - 時代別治療成績と術前予測スコアの検討

髙見澤 康之, 田藏 昂平, 永田 洋士, 森谷 弘乃介, 塚本 俊輔, 金光 幸秀 (国立がん研究センター中央病院大腸外科)
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【背景】直腸癌に対する有望な治療選択肢が増えた現在において、側方郭清(LLND)の適応については再考すべき時期にある。しかし、治療選択を行う上で治療前診断能の向上が課題となっている。
【目的】LLND施行例の治療成績変遷を検討するとともに、術前側方リンパ節転移(LLNM)予測スコアの確立を目的とした。
【対象と方法】
検討1: 1975-2020年にLLNDを施行したpStage I-III下部直腸癌992例を手術年代別に比較する。
検討2: 2000-2020年に術前MRIを撮影した上でLLNDを施行したpStage I-IV下部直腸癌438例を開発群(n=213)と検証群(n=225)に分け、ロジスティック回帰分析を用いたLLNM予測スコアを開発・検証する。
【結果】検討1: 対象を手術年代により1975-2000年(n=386, 39%), 2001-2010年(n=296, 30%), 2011-2020年(n=310, 31%)の3群に分類した。術前治療は全体で68例(7%)にのみ施行された。5年全生存率(5yOS)はそれぞれ、72.3%、84.0%、89.3%でありOSは手術年代が新しいほど良好であった(p<0.001)。2000-2011年におけるpStage I、IIの5yOSはそれぞれ97.7%、94.3%と良好であった一方で、pLLNM症例の5yOSは71.1%に留まった。
検討2: 開発したLLNM予測スコア(cN2/側方リンパ節長径≥8mm/非分化型腺癌=2点、cN1/RbP/遠隔転移=1点)は、検証群でAUC0.79を示した。高リスク群(5点以上)におけるLLNM陽性的中率は57.1%に留まったが、低リスク群(0-1点)におけるLLNM陰性的中率は95.2%と高かった。
【結論】集学的治療の発達により直腸癌の治療成績は向上しているが、pLLNMに対する治療成績は、LLND+補助化学療法を行っても十分とは言えず、これらの集団には術前治療を含めた更なる治療開発が望まれる。本研究ではpLLNMを術前に予測する因子として複数のリスク因子を抽出したが、pLLNMの十分な予測性能は得られなかった。しかし本スコアはLLNM移陰性症例の選別に有用であり、LLND適応の最適化に寄与する可能性がある。