講演情報
[PD6-7]下部進行直腸癌に対する術前(化学)放射線療法後に予防的側方郭清は必要か?
平松 康輔, 戸田 重夫, 柏木 惇平, 高橋 泰宏, 冨田 大輔, 呉山 由花, 前田 裕介, 福井 雄大, 花岡 裕, 的場 周一郎, 上野 雅資, 黒柳 洋弥 (国家公務員共済組合連合会虎の門病院)
【目的】当科ではcStageII,IIIの下部直腸癌に対して術前(化学)放射線療法を行っている。手術はTMEに加えて、治療前の画像評価で長径7mm以上の側方リンパ節腫大を認めた症例に対し腫大側のみ郭清する選択的側方郭清(LLND)を行っている。本研究はその妥当性について検討する。【術前治療】現在放射線治療レジメンは化学放射線療法(CRT) [54.0/28Fr,oral 5-FU]、短期放射線療法 (SRT) [25.0Gy/5Fr]を併用している。また以前よりcT4bやcN2、両側側方リンパ節転移症例に対してtotal neoadjuvant therapy(TNT)を行ってきたが、現在ではAV5cmより肛門側の病変に対してNon-operative Management(NOM)を意図した臨床試験に参加し、TNTを行っている。【方法】当科において2010年から2023年までに術前放射線治療を行った遠隔転移を伴わないStageⅡ,Ⅲの下部進行直腸癌371例を対象とし、全体の治療成績を検討した。またNOMとなった症例を除いた手術症例をLLND+群とLLND-群に分けて比較検討した。【結果】観察期間の中央値(IQR)は58(30-74)か月。LCRT 207例、SRT 90例、TNT74例。術式は124例に側方郭清(片側93例、両側31例)を施行。肛門温存率は80%。治療成績に関して、LCRTとTNTの284例中、pCRもしくは観察時点でNOM継続している症例が40例(14%)であった。LLND+群のうち病理学的に転移陽性だったのが31%であった。全体の5年全生存率(OS)は83%、無再発率生存率(RFS)は73%、累積局所再発率(cLRR)は8%。LLND-群(235例)とLLND+群(124例)の比較ではOS 83% vs 82%(p=0.20)、RFS 72% vs 73%(p=0.72)、cLRR 7% vs 10%(p=0.16)でいずれも統計学的な有意を認めなかった。またLLND-群において側方領域に局所再発した症例は5例(2%)であった。【結語】術前治療前に長径7mm 以上の腫大を郭清適応とした選択的側方郭清の治療成績では、側方郭清した症例の病理学的転移率は31%と妥当なものと考えられた。また側方郭清施行症例と非施行症例の長期成績に関していずれも統計学的有意差が認められなかった。非施行症例の側方領域への局所再発も2%と許容できる範囲内と考えられ、放射線治療後の症例において非腫大リンパ節の郭清を省略することは妥当と考えられた。