講演情報

[PD6-9]臨床的側方リンパ節転移陽性下部進行直腸癌におけるTNT後の側方リンパ節郭清の意義

野口 竜剛1, 坂本 貴志1, 松井 信平1, 向井 俊貴1, 山口 智弘1, 河内 洋2, 秋吉 高志1 (1.がん研究会有明病院大腸外科, 2.がん研究会有明病院病理部)
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【背景・目的】本邦において進行下部直腸癌に対する治療として、直腸間膜全切除(total mesorectal excision; TME)と側方郭清が標準治療とされている。近年、total neoadjuvant therapy (TNT)が術前化学放射線療法に比べ遠隔再発率を抑制することが示され、本邦でも普及してきている。一方、側方リンパ節転移が疑われる症例に対するTNTの意義は明らかではない。今回、臨床的側方転移陽性例に対するTNTの治療効果および病理学的側方転移陽性に関わる因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】2004年8月から2020年11月までに術前TNTを施行後に側方郭清を伴うTMEを行った症例107例を対象とし、後方視的に検討を行った。臨床的側方リンパ節転移の診断基準はMRIで治療前長径7mm以上とし、治療後の径に関わらず治療前に臨床的側方転移陽性と診断された側のみ側方郭清を行った。
【結果】48名が側方リンパ節の短径7mm未満であり、59名が短径7mm以上であった。短径7mm以上群では7mm未満群と比べ、有意に病理学的側方転移率が高かった(44.1% vs. 2.1%, P<0.001)。短径7mm以上群において治療前CEA、mrEMVI、治療前側方リンパ節のMRI悪性所見、治療後側方リンパ節短径4mm以上を含むロジスティック回帰分析を行うと、治療後側方リンパ節短径4mm以上 (OR 15.66、P=0.0021)、治療前側方リンパ節の悪性所見 (OR 5.480、P=0.0215)が病理学的側方転移陰性となる独立した因子であった。治療後リンパ節短径4mm未満の症例では病理学的側方転移陽性率は7.1%であり、治療後リンパ節短径4mm以上の症例での病理学的側方転移陽性率は、治療前側方リンパ節悪性所見のない症例では25.0%で、悪性所見のある症例では66.7%であった。
5年生存率、5年無再発生存率、5年局所無再発生存率はいずれも、側方転移陽性症例で陰性症例に比して有意に不良であった。
【結語】TNT後の臨床的側方転移陽性症例において、治療前短径7mm未満群では側方転移は2%のみにしか認めなかった。短径7mm以上群においては、治療前悪性所見と治療後リンパ節短径が病理学的側方転移陽性に関連しており、治療後の側方郭清の適応の判断材料となると考えられた。