講演情報

[PD7-2]切除不能遠隔転移を有する大腸癌の原発巣切除意義

出嶋 皓, 中野 大輔, 坂元 慧, 中守 咲子, 加藤 博樹, 高雄 美里, 川合 一茂 (がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科)
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【背景】切除不能遠隔転移を有する大腸癌に対しては有症状でない限り原発巣非切除、及び化学療法先行が標準治療とされる。しかし施設によりその治療方針は異なることも多い。原発切除先行群と化学療法群のOutcomeを比較した。
【対象と方法】2012年1月から2021年12月までに当院で治療を実施した、切除不能遠隔転移を有する大腸癌414例について、原発切除先行群(以下Surgery first, S F群)と化学療法群(以下Chemotherapy first, C F群)に分類し、後方視的に検討した。
【結果】S F群が220例、CF群が194例であり、腫瘍の局在(右側結腸/左側結腸(直腸RS部含む)/直腸)は73/93/54 vs. 52/82/60 (p=0.23)と差を認めなかった。深達度(cT3以下/cT4/cTX)は109/102/9 vs. 84/88/22 (p<0.01)であり、リンパ節転移(cN1/cN2/cNX)は92/120/8 vs. 117/55/22 (p<0.01) であった。また遠隔転移(1臓器/2臓器/3臓器以上)は103/92/25 vs. 109/51/34(p<0.01)であった。
初診時から化学療法開始までの期間の中央値は、70日 vs. 25日であった。化学療法のレジメンでオキサリプラチンもしくはイリノテカンが投与できた症例は、166例(75.5%)vs. 182例(93.8%)であった。SF群のうち、原発巣切除後に化学療法が実施できなかった症例は35例(15.9%)であり、CF群のうち経過中に穿孔や腸閉塞等で姑息的手術を要した症例は8例(4.1%)であった。Conversionとして根治的手術を行えた症例は、13例(5.9%)vs. 7例(3.6%)であった。
単変量解析において、5年全生存率(以下OS)は、15.1% vs. 7.2%(p=0.04)と有意にSF群が長く、多変量解析においてもSF vs. CF[HR 1.43, p値<0.01]と有意にSF群のOSが良好であった。他のOS不良因子としては、年齢(p<0.01)、右側結腸(p<0.01)、2臓器以上の転移(p<0.01)が独立した因子であった。
【結語】切除不能遠隔転移を有する大腸癌において、有症状/無症状すべての症例で解析すると、原発巣切除を行った方がむしろ予後良好であった。手術による化学療法の遅れは45日程度であり、将来的な閉塞や出血が危惧される症例においては原発巣切除も治療オプションとなり得ると考えられた。