講演情報
[PD7-8]Stage IV大腸癌におけるcfDNAを活用した治療戦略 ―リアルタイムモニタリングとMRD評価―
岩井 拓磨1, 山田 岳史1, 上原 圭1, 進士 誠一1, 松田 明久1, 横山 康行1, 高橋 吾郎1, 宮坂 俊光1, 香中 伸太郎1, Mongkhonsupphawan Aitsariya1,2, 吉田 寛1 (1.日本医科大学消化器外科, 2.Department of Surgery, Faculty of Medicine Siriraj Hospital)
【背景・目的】Stage IV大腸癌において、治療選択やconversion切除の適応判断は極めて複雑であり、従来の腫瘍マーカーや画像診断には限界がある。われわれは、血中cfDNA(変異allele頻度:variant allele frequency, VAF、DNA integrity index)および腹水中エクソソームcfDNAの変異検出を用いて、治療反応のリアルタイム評価および微小残存病変(MRD)検出の有用性を検討した。
【対象・方法】2017~2024年に当科で治療を受けた進行大腸癌患者を対象とした。BRAFV600E変異陽性かつMSSの症例では、初回治療前後の血中cfDNAをdroplet digital PCR(ddPCR)により評価し、VAFと全生存期間(OS)、治療反応との関連を解析した。肝転移切除症例および直腸局所進行癌に対する術前治療症例では、cLBRおよびintegrity indexの治療前後変化と早期再発や奏効との関連を検討した。さらに、腹水中エクソソームcfDNAについて、術前後のVAF変動と再発との関係を解析した。
【結果】BRAFV600E変異症例(n=14)では、治療後にVAFが低下した群でOSが有意に延長し(511 vs 189 days, p=0.03)、またVAFの変動はCEAやCA19-9よりも治療効果を迅速かつ正確に反映していた。肝転移切除症例(n=45)では、術後にcLBRが上昇した群で早期再発率が有意に高かった(60% vs 14.3%, p=0.002)。局所進行直腸癌に対する術前治療症例(n=11)では、奏効例においてintegrity indexが大きく変動したのに対し、非奏効例では前後差は乏しかった(p=0.015)。腹水エクソソーム解析では(n=32)、cT4病変、播種結節、再発腫瘍において術前VAF陽性率が高く、また術後VAFの上昇や遷延は再発リスクの上昇と関連していた。
【結語】cfDNAは、治療モニタリングおよびMRD評価において極めて有用な非侵襲的バイオマーカーである。血中および腹水cfDNAの動態を指標とした動的個別化治療戦略は、Stage IV大腸癌の精密医療を実現する鍵となりうる。
【対象・方法】2017~2024年に当科で治療を受けた進行大腸癌患者を対象とした。BRAFV600E変異陽性かつMSSの症例では、初回治療前後の血中cfDNAをdroplet digital PCR(ddPCR)により評価し、VAFと全生存期間(OS)、治療反応との関連を解析した。肝転移切除症例および直腸局所進行癌に対する術前治療症例では、cLBRおよびintegrity indexの治療前後変化と早期再発や奏効との関連を検討した。さらに、腹水中エクソソームcfDNAについて、術前後のVAF変動と再発との関係を解析した。
【結果】BRAFV600E変異症例(n=14)では、治療後にVAFが低下した群でOSが有意に延長し(511 vs 189 days, p=0.03)、またVAFの変動はCEAやCA19-9よりも治療効果を迅速かつ正確に反映していた。肝転移切除症例(n=45)では、術後にcLBRが上昇した群で早期再発率が有意に高かった(60% vs 14.3%, p=0.002)。局所進行直腸癌に対する術前治療症例(n=11)では、奏効例においてintegrity indexが大きく変動したのに対し、非奏効例では前後差は乏しかった(p=0.015)。腹水エクソソーム解析では(n=32)、cT4病変、播種結節、再発腫瘍において術前VAF陽性率が高く、また術後VAFの上昇や遷延は再発リスクの上昇と関連していた。
【結語】cfDNAは、治療モニタリングおよびMRD評価において極めて有用な非侵襲的バイオマーカーである。血中および腹水cfDNAの動態を指標とした動的個別化治療戦略は、Stage IV大腸癌の精密医療を実現する鍵となりうる。