講演情報

[PD8-1]有床診療所における直腸瘤の診断と治療

山田 英貴1, 森 俊治2, 田中 香織2 (1.山田外科内科, 2.森外科医院)
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<はじめに>2023年に発刊された便通異常症診療ガイドラインでは直腸瘤は直腸・肛門障害型の非狭窄性器質性便秘症に分類されている。我々は排便障害の症状があり、直腸診で直腸膣中隔の脆弱性を認める患者に対して、Cinedefecographyを施行し、怒責時に直腸前壁が2cm以上前方に突出する場合に直腸瘤と診断している。保存的治療で症状が改善しない症例に対し、経肛門的アプローチで外科治療を施行している。我々が施行している直腸瘤に対する手術方法と治療成績について報告する。
<対象と方法>2020年4月から2025年3月までの5年間に直腸瘤症例21例に手術を施行した。術前術後に排便造影を施行し、直腸瘤の大きさを測定。2020年から2022年までは直腸粘膜を短軸方向に運針して縫縮するSullivan手術、2023年以降は直腸粘膜を長軸方向に運針して縫縮するTransanal anterior Delorme(TAD)を施行。また、術前、術後2ヶ月、術後1年に肛門内圧、便秘・便失禁の程度を評価した。便秘および便失禁の定量化にはConstipation Scoring System(CSS)とFecal Incontinence Severity Index(FISI)を用いた。
<Cinedefecography>バルーンを挿肛後,疑似便を注入し, 透視台に設置したポータブルトイレ上でrest,squeeze,strainの3相を撮影し、直腸瘤の大きさを測定。2cm以上で直腸瘤と診断。
<結果>・1例で直腸瘤の再発を認め、再手術を行ったが、Clavien-Dindo分類Grade II以上の合併症は認めなかった。
・直腸瘤の大きさは手術により有意に縮小していた。
・肛門内圧はMRPとMSP共に術前、術後2ヶ月、術後1年で変化していなかった。
・FISIは術前、術後2ヶ月、術後1年で有意な変化を認めなかったが、CSSは術後1年の時点で有意に改善していた<P=0.043>。
<考察>・直腸瘤の治療は当院の様な有床診療所でも安全に行う事ができる術式と思われた。