講演情報

[PD8-4]インフォームドコンセントを重要視した肛門診療の工夫―デジタル直腸肛門鏡連動電子カルテの有用性―

樽見 研1, 吉田 幸平2 (1.札幌駅前樽見おしりとおなかのクリニック, 2.新宿おしりのクリニック)
PDFダウンロードPDFダウンロード
肛門疾患の診療は問診の他、視診及び指診のみでも可能である。しかしそれだけでは診察結果は診察した医師の主観に依るところが大きく、診察で得た情報を患者に伝えにくいのが欠点である。患者はとりあえず自分は「ぢ」なんだろうと思って肛門科を受診する。しかし意外と患者は何の「ぢ」なのか、そもそも「ぢ」とは何なのかも知らないことが多い。そして「ぢ」だろうと思って受診したのに実は大腸がんなどの大腸疾患、悪性疾患だったということも経験する。インフォームドコンセントが重要視される昨今は肛門疾患の診療においても医療者側が得られた診察結果を客観的な情報として患者側にわかりやすく、かつ効率的に伝達することが重要である。
当院では肛門診療において電子カルテと連動した小型カメラ付き透明筒型デジタル直腸肛門鏡を使用し、下部消化管内視鏡検査や肛門超音波検査の結果も含めて診察した情報をリアルタイムで開示して、患者へのスムーズで分かりやすい説明に役立てている。このシステムの利点として以下のようなものがあげられる。
①痔核、裂肛、痔瘻いずれの痔疾患に対して視覚的な説明が可能である。
②筒形肛門鏡でも器具を出し入れすることによって、脱出病変(痔核の脱出、肛門ポリープの脱出、腫瘍性病変の脱出)の再現が可能である。
③出血病変の出血点の同定が容易である。
④直腸病変(潰瘍性大腸炎など)の拾い上げに有用である。
⑤視診が重要な肛門周囲皮膚疾患の鑑別に有用である。
⑥手術の説明(動画を含めて)、創部の経時的経過の説明に有用である。
今回、当院での小型カメラ付き透明筒型デジタル直腸肛門鏡のシステムを紹介し、インフォームドコンセントを重要視した肛門診療におけるその有用性について報告する。