講演情報
[PD9-1]本邦における経口抗菌薬に注目した腸管前処置の現状-日本外科感染症学会アンケート調査-
松田 明久1, 丸山 弘2, 水内 祐介3, 渡邉 学4, 小林 美奈子5, 上村 健一郎6, 塩見 尚礼7, 菅野 仁士8, 平井 潤9, 横山 康行1, 高木 剛10, 本間 重紀11, 松橋 延壽12, 問山 裕二5, 川上 雅代13, 宮本 裕士14, 佐々木 健15, 石塚 満16, 吉田 寛1, 北川 雄光17 (1.日本医科大学消化器外科, 2.日本医科大学多摩永山病院外科, 3.九州大学臨床・腫瘍外科, 4.東邦大学医療センター大橋病院外科, 5.三重大学消化管・小児外科, 6.広島大学消化器外科, 7.長浜赤十字病院外科, 8.日本医科大学医療管理学, 9.日本医科大学千葉北総病院感染制御部, 10.西陣病院外科, 11.札幌厚生病院外科, 12.岐阜大学医学部附属病院消化器外科, 13.大浜第一病院外科, 14.熊本大学病院消化器外科学, 15.鹿児島大学病院消化器外科学, 16.獨協医科大学下部消化管外科, 17.慶應義塾大学病院消化器外科)
【緒言】大腸手術における腸管前処置はSSI予防において重要であり,本邦のガイドラインでは機械的前処置(MBP)と経口抗菌薬(OABP)の両者を行う全前処置(FBP)とOABP単独が推奨されている。しかし,本邦におけるOABP使用は,耐性菌懸念による激減から直近の調査(2014年:9.7%)まで使用は限定的であった。そこで本邦の現状を把握するべくアンケート調査を行った。【方法】日本外科感染症学会臨床試験支援委員会主導にて腸管前処置に関する全国アンケート調査を行い,外科医456名(412施設)から回答を得た。【結果】前処置の方法は手術部位に関わらず,MBP単独,FBP,前処置なし,OABP単独の順に多かった。47.1%の外科医がOABPを常時使用しており,84.4%が直近10年以内に導入していた。OABPは前日のみ(91.4%),メトロニダゾールとカナマイシン併用(88.1%)が最も多かった。OABP不使用の理由として,低SSI率にて不要,保険適応外,耐性菌懸念の順に多かった。OABP使用は,免許取得後10年以内および31年以上の医師で少なく,年間100例以上の大腸癌手術,大腸外科専門,体腔内吻合採用で多かった。現在OABPを使用していない医師の約1/3は今後の導入予定であった。【結論】本邦においてOABPの使用頻度がここ10年で約半数まで増加していることが分かったが,米国の83.2%に比べると依然として少ない。しかし,現有のエビデンスも低侵襲手術,手術部位,体腔内吻合などのSSI発生の重要な要素を十分に加味されている訳ではなく,OABPに関する本邦独自のエビデンス創出が求められる。