講演情報

[PL]大腸肛門病学会とともに歩んだ道

山口 茂樹 (東京女子医科大学消化器・一般外科)
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1986年に横浜市立大学を卒業後、同大学で研修を経て第2外科に入局いたしました。当時、本学会理事長の土屋周二教授のもとで大腸グループの一員となり、自然と大腸肛門病学会との縁が始まりました。以来、学会に参加することは私の臨床・研究の歩みと常に重なっています。
大学院では病理学を副科目とし、大腸癌における脈管侵襲や、乳癌で注目されていたerbB2について検討しました。また直腸癌の拡大郭清に関する学位論文を大腸肛門病学会誌に発表し、学会賞をいただいたことは大きな励みとなりました。
そして自ら手術を執刀する立場となると、その魅力と同時に難しさにも直面しました。大木繁男先生、池秀之先生ら恩師のご指導を受けて大腸手術の「いろは」を学び、学会では神経温存や側方郭清のビデオセッションに挑んできました。1990年代後半になり腹腔鏡手術が大腸外科にも本格的に導入されると、嶋田紘教授のご厚意により米国Mount Sinai病院Milsom教授のもとへ留学の機会をいただきました。そこで得られた手術手技のみならず、臨床・研究・国際感覚にわたる多くの学びは、その後の自分を方向づける原点となりました。Gastrocolic trunkの解剖に関する研究はDCR誌に掲載され、『Gray’s Anatomy』にも引用されるなど、忘れがたい成果となりました。
帰国後は静岡がんセンター、埼玉医大国際医療センターと新設病院での腹腔鏡手術の普及に尽力し、JCOG臨床試験への参加、周術期管理の革新、症例数の飛躍的増加など、多くの経験を積み重ねてまいりました。その経験を共有し議論する場が本学会であり、私はここに育てていただいたと強く感じています。
手術は常に発見と疑問の連続です。私は幸い多くの症例を通じて考察を重ね、自らの「大腸手術のかたち」を追い求めてきました。外科手術により患者が救われることは、患者にとっての希望であると同時に、外科医にとっての無上の喜びであり、その喜びこそが私の原動力でした。本講演では、大腸外科医としての私の歩み、そして大腸肛門病学会への感謝の思いを込めてお話しさせていただきます。