講演情報

[R1-1]痔核に対する結紮切除術を中心とした複合的アプローチ

竹中 雄也, 渡部 晃大, 内海 昌子, 久能 英法, 三宅 祐一朗, 小野 朋ニ郎, 相馬 大人, 安田 潤, 齋藤 徹, 根津 理一郎, 弓場 健義 (大阪中央病院外科)
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【緒言】痔核の術式は様々なものが報告されているが,多様な形態をとる痔核に対して柔軟に対応できる結紮切除術はその中心に据えるべき術式と考える.当科では結紮切除術を中心としながら症例に応じて分離結紮,粘膜縫縮を併用した複合的アプローチを行なっている.
【手術手技】脊椎麻酔下,Jackknife位で施行している.結紮切除術の手技は,術後狭窄の予防として切除幅を不用意に拡げず上皮の温存に努めている.肛門上皮は上皮に余裕のある部位と余裕のない部位があり,これを見極めてひょうたん型の切離ラインをとっている.また切除個数が多い場合や肛門管が深い症例ではスリット式の肛門鏡を用いて肛門管の緊張を確認しつつ半閉鎖を行う工夫も行っている.術後の晩期出血は根部からの出血に加えて肛門内の縫合した創が離開することによる出血があり,これらを予防するために根部結紮を行ったのちに何度か結紮を追加している.具体的には根部を結紮したのちに根部結紮糸と粘膜切離端を縫合した糸を2回結紮して組織を根部結紮の方に集約させ,粘膜切離端の一部を根部方向に吊り上げる.その後肛門管外縁まで連続縫合して半閉鎖する際に途中で結紮を追加している.
結紮切除の短所を補う工夫として分離結紮や直腸粘膜の縫縮などの手技を併用している.痔核の固定が部分的に保たれており,痔核本体の牽引により肛門管部にnotchを形成するような病変に対しては反転して脱肛する部位のみを分離結紮する.また痔核口側の直腸粘膜に弛みがあるような病変には直腸粘膜の刺通結紮による縫縮を行うか,痔核本体から直腸粘膜の弛んだ部位までを連続的に縫縮することで弛んだ粘膜を挙上固定する.
【成績】2021年1月から2024年12月までの間に上記の手技を用いて痔核手術を行ったのは949症例であった.手術時間は平均20.2±6.9分で結紮切除のみを施行した症例は211例,分離結紮を併用した症例は524例,直腸粘膜の縫縮手技を併用した症例は484例であった.術後疼痛の目安として鎮痛薬の追加は96例(10.1%)に必要であった.術後出血は20例(2.1%)に認めた.8例(0.8%)で再発を認め,3例で再手術を施行し,残り5例は保存的に軽快した.