講演情報
[R10-4]低位前方切除後症候群に対する薬物療法の効果に関する検討
本間 祐子, 味村 俊樹, 太田 学, 松本 理沙, 利府 数馬, 熊谷 祐子, 伊藤 誉, 鯉沼 広治, 山口 博紀 (自治医科大学消化器一般移植外科)
【背景】低位前方切除後症候群(low anterior resection syndrome: LARS)は頻回便や便失禁,排便困難など様々な症状を示すため,各症状に合わせた治療が必要となる.治療は薬物療法,バイオフィードバック(BF)療法,経肛門的洗腸療法(transanal irrigation:TAI),仙骨神経刺激療法(sacral neuromodulation: SNM),ストーマ造設術があり,患者の状態に合わせて選択・組み合わせて実施している.薬物療法に関してはポリカルボフィルカルシウム(ポリカルボフィル),ロペラミド塩酸塩(ロペラミド),ラモセトロン塩酸塩(ラモセトロン)を使用する他,坐剤や下剤も使用している.
【目的】LARSに対する薬物療法の治療効果を症状と生活の質(quality of life:QOL)の観点から検討する.
【方法】2018年5月~2024年12月に排便機能外来を受診して薬物療法を受けたLARS患者を対象とした.治療効果は,症状はLARS特異的排便障害スコアであるLARSスコア(最善0点-最悪42点)で,QOLに関しては便失禁特異的QOL評価尺度(Japanese version of fecal incontinence quality of life scale:JFIQL)で評価した.
【結果】対象期間の受診者56例中52例に治療を行い,治療法は重複を含めて薬物療法 48例(86%),BF療法 2例,TAI 6例,SNM 1例,直腸脱修復術 1例,ストーマ造設術 7例であった.解析対象は,薬物療法を受けた48例(男33例,年齢中央値61歳)で,肛門使用開始後から受診までの期間は中央値14ヶ月で,初診時のLARSスコア(n=47)は中央値38点,Major LARS率87%であった.薬物療法の詳細は,重複例を含めて,ポリカルボフィル38例(79%),ロペラミド24例(50%),ラモセトロン11例(23%),酸化マグネシウム5例(10%),ポリエチレングリコール2例(4%),レシカルボン坐剤2例(4%),リナクロチド1例(2%),センノシド1例(2%)であった.薬剤の使用数は,単剤使用18例(38%),2剤併用25例(52%),3剤併用4例(8%),4剤併用1例(2%)であった.LARSスコア中央値(n=43)は治療前後で38点(範囲:13-41)から36点(0-41)と改善傾向を示した(p=0.05).JFIQL中央値(n=43)は治療前後で2.1点(1.2-3.6)から2.7点(1.3-4.0)と有意に改善した(p=0.004).
【結語】LARSに対する薬物療法は症状とQOLの改善をもたらすことが示唆された.
【目的】LARSに対する薬物療法の治療効果を症状と生活の質(quality of life:QOL)の観点から検討する.
【方法】2018年5月~2024年12月に排便機能外来を受診して薬物療法を受けたLARS患者を対象とした.治療効果は,症状はLARS特異的排便障害スコアであるLARSスコア(最善0点-最悪42点)で,QOLに関しては便失禁特異的QOL評価尺度(Japanese version of fecal incontinence quality of life scale:JFIQL)で評価した.
【結果】対象期間の受診者56例中52例に治療を行い,治療法は重複を含めて薬物療法 48例(86%),BF療法 2例,TAI 6例,SNM 1例,直腸脱修復術 1例,ストーマ造設術 7例であった.解析対象は,薬物療法を受けた48例(男33例,年齢中央値61歳)で,肛門使用開始後から受診までの期間は中央値14ヶ月で,初診時のLARSスコア(n=47)は中央値38点,Major LARS率87%であった.薬物療法の詳細は,重複例を含めて,ポリカルボフィル38例(79%),ロペラミド24例(50%),ラモセトロン11例(23%),酸化マグネシウム5例(10%),ポリエチレングリコール2例(4%),レシカルボン坐剤2例(4%),リナクロチド1例(2%),センノシド1例(2%)であった.薬剤の使用数は,単剤使用18例(38%),2剤併用25例(52%),3剤併用4例(8%),4剤併用1例(2%)であった.LARSスコア中央値(n=43)は治療前後で38点(範囲:13-41)から36点(0-41)と改善傾向を示した(p=0.05).JFIQL中央値(n=43)は治療前後で2.1点(1.2-3.6)から2.7点(1.3-4.0)と有意に改善した(p=0.004).
【結語】LARSに対する薬物療法は症状とQOLの改善をもたらすことが示唆された.