講演情報
[R10-6]術前から開始するLARS診療の有用性と課題:地域連携による包括的介入の後方視的検討
秋月 恵美1,2, 奥谷 浩一2, 豊田 真帆2, 岡本 行平2, 石井 雅之2, 佐藤 綾1, 鈴木 崇史1, 西尾 昭彦1, 石山 勇司1, 石山 元太郎1 (1.札幌いしやま病院, 2.札幌医科大学外科学講座消化器外科学分野)
【背景】肛門温存手術後の低位前方切除後症候群(LARS)の診療はその重要性が広く認識されてきたが、診療開始のタイミングや方法に関する明確な基準は確立されていない。LARSは時間経過とともに症状が変化し、排便障害と直腸術後管理の双方にわたる知識を要する複雑な病態であり、診療には多大な労力を伴う。近年では術前からの介入や多職種連携による支援の有効性が注目されている。
札幌医科大学では2019年より重症LARS高リスク症例に対する術前からのLARS診療を開始しており、2024年からは地域の肛門専門病院と連携し術前から術後までシームレスなLARS診療を提供している。術前は生来の排便習慣の確認と肛門内圧評価、予想される術後LARS重症度の説明とLARSへの対処・治療に関する情報提供を行っている。経肛門操作を予定している症例に対しては術前から骨盤底筋訓練を開始し、この際にはバイオフィードバック療法によって指導している。
【目的】術前からLARS診療を開始することで術後の排便機能およびQOLが改善するかを明らかにし、継続的診療体制の有用性と今後の課題を検討する。
【方法】2017~2023年に下部直腸腫瘍に対し手術を受け、ストマ閉鎖後の評価が可能であった136例(uLAR34例、ISR102例)を対象に後方視的解析を行った。術前介入のない2017–2018年(C群:43例)と、2019年以降術前からLARS診療を開始した群(I群:93例)で比較を行った。肛門内圧(MRP、MSP)とLARS score、CCFIS、一部症例ではSF-36によるQOL評価を用いた。
【結果】肛門内圧はMRP・MSPともにI群で良好であった(C群/I群)(術後6M:12M)MRP 32/40:36/41、MSP 140/160:160/177)。排便スコアはLARS scoreとCCFISともに両群に差を認めなかった。SF36は社会役割的健康度(RCS)がI群で良好であった(術後1M:3M:12M)40/45:41/48:50/53。
【結語】術前からLARS診療を開始することで術後の肛門機能およびQOLが改善する可能性が示唆された。今後は対象の拡大と長期的効果の検証が求められる。
札幌医科大学では2019年より重症LARS高リスク症例に対する術前からのLARS診療を開始しており、2024年からは地域の肛門専門病院と連携し術前から術後までシームレスなLARS診療を提供している。術前は生来の排便習慣の確認と肛門内圧評価、予想される術後LARS重症度の説明とLARSへの対処・治療に関する情報提供を行っている。経肛門操作を予定している症例に対しては術前から骨盤底筋訓練を開始し、この際にはバイオフィードバック療法によって指導している。
【目的】術前からLARS診療を開始することで術後の排便機能およびQOLが改善するかを明らかにし、継続的診療体制の有用性と今後の課題を検討する。
【方法】2017~2023年に下部直腸腫瘍に対し手術を受け、ストマ閉鎖後の評価が可能であった136例(uLAR34例、ISR102例)を対象に後方視的解析を行った。術前介入のない2017–2018年(C群:43例)と、2019年以降術前からLARS診療を開始した群(I群:93例)で比較を行った。肛門内圧(MRP、MSP)とLARS score、CCFIS、一部症例ではSF-36によるQOL評価を用いた。
【結果】肛門内圧はMRP・MSPともにI群で良好であった(C群/I群)(術後6M:12M)MRP 32/40:36/41、MSP 140/160:160/177)。排便スコアはLARS scoreとCCFISともに両群に差を認めなかった。SF36は社会役割的健康度(RCS)がI群で良好であった(術後1M:3M:12M)40/45:41/48:50/53。
【結語】術前からLARS診療を開始することで術後の肛門機能およびQOLが改善する可能性が示唆された。今後は対象の拡大と長期的効果の検証が求められる。