講演情報
[R11-2]大腸憩室炎に対する手術治療のベストプラティスを考える
近藤 圭策, 天上 俊之, 河合 功, 波多邊 繁, 杉 朋樹, 中田 英二 (鳳胃腸病院外科)
【はじめに】憩室炎関連で手術を要する症例は少数ながら存在する。我々は、このような症例に対して積極的に腹腔鏡下手術を行ってきた。自験例を検証し、手術治療を要する症例の特徴,および術式選択のベストプラクティスは何かについて考えてみる。【対象と方法】2015年1月から2024年3月の間、に憩室炎関連疾患に対して手術を行った25例を対象とする。これら症例の特徴および術後成績の検証を行なう。 また術式選択の時代変遷についても検証を行なう。【結果】性別は、男性/女性, 15/10であった。年齢中央値は、59歳(2X-7X歳)であった。緊急手術5例,待機手術が15例であった。全例,腹腔鏡下手術が選択された。手術に至った理由は、①反復する憩室炎,3例,②保存的治療に抵抗,6例, ③狭窄,12例,④穿孔, 1例,⑤結腸・膀胱瘻等,3例であった。選択術式は、ハルトマン手術 3例, S状結腸切除術8例,結腸左半切除術 11例,右結腸切除術1例,ドレナージ+ストーマ造設 1例,ストーマ造設 1例,であった。手術時間は中央値218分(64-530分),出血量は中央値20ml(5-800ml)であった。開腹移行例は3例(12%)であった。移行理由は、高度線維化により尿管の確実な同定および温存が困難であったためであった。CD III以上の合併症は認めなかった。2024年以降では、責任腸管の切除を行わずにストーマ造設のみ,もしくはドレナージ+ストーマ造設を選択した症例も認めた。【まとめ】大半の症例は腹腔鏡下で安全に施行することは可能であった。ただし尿管の同定が困難で、開腹移行を要する困難症例は必ず存在する。腹腔鏡下手術の最大の弱点は、触覚がないことにつきる。その際は、固執することなく開腹移行することが肝要である。また保存的治療に抵抗し,膿瘍形成かつBulkyな炎症性腫瘤を形成するような急性期の症例に対して、腸管切除を行うことはかなり難易度が高い。よってそのようなケースに対しては,責任病巣の一期的切除にこだわらず、まずドレナージおよび人工肛門造設のみを行うこともオプションの一つとして考えてよいのかもしれない。