講演情報
[R11-3]大腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡下手術の検討
本庄 優衣, 虫明 寛行, 澤井 悠樹, 福田 桃子, 村田 光隆, 小林 圭, 朱 美和, 平井 公也, 笠原 康平, 有坂 早香, 土田 知史, 上田 倫夫, 長谷川 誠司 (済生会横浜市南部病院外科)
【背景】大腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対して,結腸切除と瘻孔切除のみで膀胱部分切除は不要とする報告も増えており,結腸切除と瘻孔切除で腹腔鏡下手術症例の報告も散見される.当院でも腹腔鏡下手術を行っている.【目的】当院での大腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡下手術の有用性を検討すること.【対象と方法】2019/1月から2025/3月までに当院で大腸憩室炎による結腸膀胱に対して腹腔鏡下手術を施行した9症例を対象とし,後方視的に検討した.【結果】患者背景は,年齢中央値 65歳,男性:女性=8:1例,全症例で瘻孔形成を認めた部位はS状結腸であった.主訴は6例で泌尿器症状であったが,3例は泌尿器症状を伴わない腹痛であった.全症例でCT検査にてS状結腸に多発憩室と不整な壁肥厚,憩室と膀胱壁が接しており,接した膀胱壁の肥厚と膀胱内airを認めた.下部消化管内視鏡検査と注腸造影検査では全例にS状結腸に多発憩室を認めたが,膀胱との瘻孔と膀胱内への造影剤流出を認めたのは1例のみであった.膀胱鏡検査は7例で施行され,膀胱壁の肥厚や膀胱粘膜の浮腫を認めるも明らかな瘻孔は確認できず,膀胱造影検査は4例に施行され,明らかな瘻孔は描出されなかった. 手術因子は,4例で人工肛門造設術が先行され、全例で腹腔鏡下S状結腸切除術が施行されており,全例で膀胱との瘻孔部は瘻孔切除のみで,膀胱切除が付加された症例は認めなかった.手術時間は188分,術中出血量は15mlであり,尿道カテーテルは8例で入院中に抜去されており,術後抜去までの期間は4.5日.Clavien-Dindo分類II以上の術後合併症は2例に認め,術後麻痺性イレウスと深部SSIであった.術後在院期間は8日であり,摘出検体の病理組織学的所見で全例悪性所見は認めなかった.1例で術後2ヶ月目に気尿の症状を認めたが明らかな結腸膀胱瘻再発の診断には至っていない.【結語】大腸憩室炎による結腸膀胱瘻に対しても腹腔鏡下手術は安全に行えると考えられた.症例によっては人工肛門造設が不要の可能性が示唆された。炎症所見を認める症例では人工肛門造設を先行した二期的手術により安全な結腸切除ができる可能性があると考えられた.