講演情報

[R12-3]当院における直腸脱治療の比較

藤森 正彦1, 中塚 博文2, 先本 秀人2, 小川 尚之2 (1.呉市医師会病院大腸肛門病センター大腸・肛門外科, 2.呉市医師会病院大腸肛門病センター外科)
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はじめに】当院において、完全直腸脱に対する治療は経腹的治療を第一選択としている。全身評価にて全身麻酔が困難と想われる症例に対しては、経肛門的治療を行っている。経腹的治療は腹腔鏡下直腸後方固定術(LSR: Laparoscopic suture rectopexy)と腹腔鏡下直腸前方固定術(LVR: Laparoscopic ventral rectopexy)を行い、経肛門的治療はDelorme法(DEL)をメインに行っている。今回LSR、LVRおよびDELについて比較し、今後の直腸脱に対する治療について考察した。
【対象と方法】2010年6月から2025年3月までに行った経腹的手術(LSRとLVR)99例と2008年8月から2025年3月までに行ったDEL97例を対象とした。経腹的手術の内訳は、LSR68例、LVR31例である。それぞれの術式について、年齢・脱出長・手術時間・出血量・術中術後合併症・再発(直腸全層の脱出とした)などを比較した。
【結果】平均年齢は、LSR73.5歳、LVR 82.3歳、DEL82.5歳であり、LSRの対象はより低年齢であった。平均脱出長はLSR 6.3cm、LVR 5.8cm、DEL5.0cmであった。平均手術時間はLSR 208.4分、LVR 244.4分、DEL83.3分で、経腹的手術が長時間であった。平均出血量はLSR 56.4ml、LVR 52.4ml、DEL18.4mlであり、DELが少なかった。手術の進行の障害となる術中合併症はどの術式でも認めなかった。術後早期合併症はClavien-Dindo分類 Grade IIIbをLSRに2例(3.0%:小腸穿孔、腸閉閉塞)、LVRに1例(4.5%:ポート部小腸脱出)認めたが、その他はGrade I程度であり有意差は認めなかった。術後晩期合併症はLSR、LVRでは認めなかったが、DELではGrade IIIa(吻合部狭窄)を8例に認めた。再発は直腸全層の脱出とし、LSR 2例(2.9%)、LVR 0例(0.0%)、DEL24例(24.7%)とDELで高率であった。
【まとめ】直腸脱はQOLを著しく低下するため、高齢であっても放置すべきではない。今回の結果からも全身状態が許せば経腹的手術を選択すべきであるが、やはり全身麻酔を躊躇することもある。DELは安全に行えるが、再発率が高いことが問題となる。現在は再発率を下げるためにDELにThiersch(Leed-Keio mesh使用)を併用しており、今後長期成績を確認していきたい。