講演情報

[R12-5]骨盤臓器脱を伴う完全直腸脱に対する腹腔鏡下手術

相馬 大人, 弓場 健義, 安田 潤, 渡部 晃大, 内海 昌子, 竹中 雄也, 久能 英法, 三宅 祐一朗, 小野 朋二郎, 齋藤 徹, 根津 理一郎 (大阪中央病院)
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骨盤臓器脱(Pelvic organ prolapse:POP)は,直腸脱患者の約30%に合併すると報告されている.POPと直腸脱に対する手術術式は多様であり,POPを伴う直腸脱に対する標準的術式も確立していない.当科ではPOP合併の直腸脱に対しメッシュを使用した腹腔鏡下直腸固定術と仙骨膣固定術を併施しており,その術式を供覧し手術成績を報告する.【術式】5孔式腹腔鏡下手術で行う.腹膜翻転部を切開し、直腸膣隔膜の剥離を可及的に行った後、直腸間膜右側の腹膜を腹膜翻転部まで切開し直腸間膜右側を受動する.直腸膣隔膜を両側の肛門挙筋が露出するまで剥離した時点で,術中陰圧試験(剥離した直腸腹側を鉗子で頭側に牽引した状態で,経肛門的に吸角を用いた陰圧をかけ直腸の脱出を確認する)を行い,直腸の脱出が無い症例は直腸腹側固定(ventral rectopexy:VR)を選択し,直腸が脱出する症例では,直腸全周を骨盤底まで剥離して直腸背側固定(posterior rectopexy:PR)を行う方針としている.直腸の剥離後、仙骨岬角前面を剥離する.VRを選択した症例では,この時点で吸収性フィルムによりコーティングされたメッシュを短冊状に形成して,一端を直腸腹側に縫合固定する.ついで,子宮膣上部切断を行った後,子宮頸部断端周囲を膀胱頸部背側まで剥離し,子宮頸部断端前後壁にY字型メッシュを縫合固定する. VRの症例では,直腸側のメッシュに子宮断端のメッシュを重ね合わせて牽引した状態で,メッシュの対側を仙骨岬角にstaplerで固定する.LRを選択した症例では,仙骨岬角に直腸側のメッシュをstaplerで固定した後に,子宮断端側のメッシュを牽引し重ねて固定し,直腸を牽引して直腸固定用のメッシュに縫合固定する.腹膜を縫合しメッシュを被覆して手術を終了する.【手術成績】H29年4月~R7年4月に35例(平均年齢80±6歳)施行し,平均手術時間は(312±99)分,出血量(51±21)ml であった.合併症はイレウス2例,せん妄2例,骨盤内膿瘍1例,その他 2例であった.再発は膀胱瘤8例,子宮脱1例であったが直腸脱の再発は認めていない.【結語】POP合併の直腸脱に対する腹腔鏡下直腸固定術と仙骨膣固定術の併施は一期的治療が可能で有用な術式である.