講演情報

[R13-2]他臓器合併切除を要する進行・再発大腸癌に対する経肛門・経会陰的アプローチの短期成績

寺村 紘一, 大川 裕貴, 関谷 翔, 宮坂 衛, 櫛引 敏寛, 才川 大介, 鈴木 善法, 川原田 陽, 北城 秀司, 奥芝 俊一 (斗南病院外科)
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【はじめに】直腸癌に対する経肛門的全直腸間膜切除術(taTME)は、骨盤深部への良好な視認性と操作性を提供し肛門温存やR0切除の達成に有用とされている。一方で、他臓器合併切除を要する進行大腸癌に対してtaTMEを適応した報告は限られており、その有用性や安全性は十分に確立されていない。今回我々は、他臓器合併切除を要する大腸癌に対して経肛門・経会陰的アプローチを施行した症例について、短期成績を後方視的に検討した。
【方法】当科において2020年4月から2025年4月に経肛門的・経会陰的アプローチを施行した他臓器合併切除を要する大腸癌11症例を対象とした。手術は全例において2チームでの腹腔鏡手術を併用した。術前治療の有無、浸潤臓器、手術時間、出血量、術後合併症(Clavien-Dindo分類)、在院日数、病理所見などを後方視的に評価した。
【結果】対象症例の性別は男性5例、術前治療は10例に実施し、NAC5例、CRT3例、TNT2例であった。原発巣は直腸7例、S状結腸1例、再発巣は局所、側方リンパ節、腹膜播種がそれぞれ1例ずつであった。実施術式は、LAR6例、ISR1例、APR2例、骨盤内蔵全摘1例、前方骨盤内蔵全摘1例、骨盤内蔵全摘以外の合併切除臓器(重複有)は子宮2例、精嚢2例、骨盤神経叢6例、仙骨神経・尾骨・内腸骨血管がそれぞれ1例ずつであった。手術時間中央値は380(265-678)分、出血量中央値は150(5-1063)ml。術後合併症は8例に認め、Grade1:6例(全例排尿障害)、Grade2:1例、Grade3:1例であった。術後在院日数中央値は16(11-49)日。病理学的RM陽性(<1mm)は認めなかった。
【結語】他臓器合併切除を要する大腸癌に対して、経肛門的・経会陰的アプローチを併用することで適切な切除マージンの確保や手術時間の短縮が期待される。本検討の結果からこのアプローチは安全に施行可能であり、低侵襲かつ根治性の高い手術戦略の一つとなり得る。今後さらなる症例の蓄積と長期予後を含めた検討が必要である。