講演情報

[R13-3]経会陰内視鏡アプローチを併用した腹腔鏡下骨盤内臓摘除術の手技と治療成績

神馬 真里奈, 向井 俊貴, 野口 竜剛, 坂本 貴志, 松井 信平, 山口 智弘, 秋吉 高志 (がん研究会有明病院大腸外科)
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【背景】
局所進行/再発直腸癌では、根治のために骨盤内臓摘除術(pelvic exenteration:PE)が必要となることも珍しくない。また腫瘍が大きい場合は、切除の「受け」をつくる目的で経会陰内視鏡手術(trans anal/perineal endoscopic surgery:Ta)の併用が有用である。しかし、Taの手技は解剖や、鉗子の可動域制限にたいする理解が必要であり、手技の習得に時間を要する。当科では、Ta手技を可能な範囲で定型化することで、手技の安定化を図っている。
【手技】
PEの適応となる腫瘍が大きい場合、Taアプローチでは後壁の展開や授動が難しいことが多い。したがって、まず側壁で内閉鎖筋を露出し頭側に辿り、肛門挙筋腱弓を切開し膀胱側腔に入る。次に前壁へ回り込み膀胱前腔を広く剥離する。左右とも行うと前壁はDVCと尿道を残すのみとなる。ステイプラでこれらを一括切離すると腫瘍の可動性が良くなり、側壁から後壁に回り込めるようになる。腹腔側からは側方郭清を行いつつ前壁から側壁へと会陰側と交通させ、最後に後壁をつなげると腫瘍が摘出される。
【対象と方法】
2019年1月~2025年3月に当科でPEを施行した56例中、Taを併用した25例を対象に、患者背景および術後短期/長期成績を後方視的に検討した。
【結果】25例中、初発直腸癌が22例、局所再発直腸癌が3例であった。7例に術前CRT、9例にTNTが施行され、術式は骨盤内臓全摘術21例、前方骨盤内臓全摘術4例で、手術時間と出血量の中央値は652分と250mL、Clavien-Dindo分類Grade 3b以上の合併症は1例(術後出血)、骨盤死腔炎は2例、イレウスは11例で、術後死亡は認めなかった。R0切除率は96%であった。観察期間中央値22か月で、局所再発が1例(右総腸骨リンパ領節)、遠隔転移が4例あり、3年無再発生存率72%、3年局所無再発生存率94%であった。
【結語】
膀胱前腔および膀胱側腔、DVC/尿道の処理を先行することで、腫瘍のサイズに関わらずTaアプローチの定型化が可能で、良好な術後合併症率とR0切除率を得ることができた。