講演情報

[R13-7]当科における傍仙骨アプローチ手術20例の検討

梅田 晋一, 中山 吾郎, 岸田 貴喜, 服部 憲史, 村田 悠記, 小倉 淳司, 清水 大, 田中 千恵, 神田 光郎 (名古屋大学医学部消化器腫瘍外科)
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【緒言】直腸背側,仙骨前面に局在する腫瘍性病変や前立腺癌術後の尿道直腸瘻に対する手術において,経腹式および経会陰式アプローチのみでは視野確保が困難である.そのような症例に対し傍仙骨アプローチが有用であると考えられるが,既報は少ない.今回当科で行われた傍仙骨アプローチ手術について検討したので報告する.
【方法】2008年7月から2025年3月までに骨盤内腫瘍および尿道直腸瘻に対して傍仙骨アプローチを施行した20症例について後方視的に検討した.
【結果】患者背景は男性17例,女性3例で,年齢中央値は49歳(30-76歳)であった.原疾患は骨盤内腫瘍および狭窄15例,直腸尿路瘻5例であった.骨盤内腫瘍のうち悪性腫瘍は8例で痔瘻癌4例,直腸癌,直腸癌局所再発,直腸GIST,angiomyxoma再発がそれぞれ1例であった.良性腫瘍および狭窄は7例で,成熟奇形腫2例,平滑筋腫,dermoid cyst,epidermoid cyst,尾腸嚢胞,クローン病による狭窄がそれぞれ1例であった.手術方法として直腸尿道瘻の3例と骨盤内腫瘍の1例で傍仙骨アプローチのみを施行しており,直腸膀胱瘻2例と骨盤内腫瘍の14例は経腹式アプローチを併用していた.経腹式アプローチは開腹手術が4例,腹腔鏡手術が12例であった.骨盤内腫瘍の9例に直腸切断術が施行されており,7例では肛門温存が可能であった.肛門温存した6例のうち5例では直腸温存が可能であった.骨盤内腫瘍の全症例において肉眼的および病理組織学的に腫瘍の遺残を認めず切除マージンを確保できていた.術後在院日数の中央値は23.5日(14-40日)でClavien-Dindo分類Ⅲb以上の合併症は認めなかった.肛門温存症例では全症例で術後肛門機能は良好であった.骨盤内腫瘍の全症例で局所再発を認めておらず,また尿道直腸瘻の全症例で瘻孔の再発を認めていない.
【結語】骨盤内腫瘍および尿道直腸瘻に対する傍仙骨アプローチ併用は,良好な視野や術野の確保が可能となるため,根治性と機能温存の観点から有用なアプローチの一つであると考えられた.