講演情報

[R14-4]大腸癌患者における血清腫瘍マーカーに関する発生学的左右差

安藤 陽平, 宮﨑 真里奈, 堀田 千恵子, 武居 晋, 真鍋 達也, 能城 浩和 (佐賀大学医学部一般・消化器外科)
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【背景と目的】
大腸は左右で発生学的に異なる起源を持ち、大腸癌患者においても主病巣の左右局在で癌の分子生物学的に異なる特徴を示すことが知られている。一方、血清CA19-9およびCEAは消化器癌において腫瘍マーカーとして広く用いられているが、大腸癌の局在の違いでこれら腫瘍マーカーにも違いが生じるかはこれまでに検討されたことはない。今回、大腸癌患者において左右局在別の血清CA19-9とCEA値を比較検討して臨床的意義を考察した。

【対象と方法】
2009年から2024年までに当院で手術を施行したStage I〜IVの大腸癌患者978例を対象とした。腫瘍の局在により、右側大腸癌患者 384例と左側大腸癌患者 636例に分類し、術前の血清CA19-9とCEA値に関してWilcoxon順位和検定を用いて比較した。

【結果】
すべてのステージで比較すると、右側大腸癌では左側大腸癌よりもCA19-9値が有意に高かった(中央値:12 vs 11, p=0.047)。ステージ別に解析したところ、ステージI~IIでは左右差は見られなかったが、ステージIIIでは中央値 17 vs 13 (p=0.051)と右側大腸癌で高い傾向が見られ、ステージIVでは中央値 67 vs 24 (p=0.001)と右側大腸癌のCA19-9値が左側大腸癌よりも有意に高かった。一方、CEA値においては左右差の傾向は認められなかった。

【考察】
本研究において、左側大腸癌に比べて右側大腸癌ではCA19-9値が有意に高く、特にステージIVにおいてその傾向が顕著であった。右側大腸癌は中腸由来でMS-highやBRAF変異、粘液癌などの割合が高く左側大腸癌と異なる特徴を有している。これらの生物学的差異が、CA19-9の産生能や腫瘍微小環境の違いを通じて血中マーカー値に影響を及ぼしている可能性が考えられる。大腸癌ではCA19-9上昇に局在を考慮した解釈を加えることでその臨床的意義を高めることができる可能性があると考えられた。

【結語】
大腸癌では腫瘍の左右局在によってCA19-9の上昇に差異が認められた。