講演情報
[R15-4]ハサミ型ナイフに熟知した内視鏡医による初学である先端系ナイフを用いた大腸ESDの治療成績
田丸 弓弦1, 水本 健1, 関本 慶太朗1, 安居 みのり1, 鎌田 大輝1, 仙波 重亮1, 中村 一樹2, 寺岡 雄吏2, 岡崎 彰仁2, 畠山 剛1, 髙木 慎太郎2, 吉田 成人1 (1.NHO呉医療センター・中国がんセンター内視鏡内科, 2.NHO呉医療センター・中国がんセンター消化器内科)
【目的】我々の施設では一貫してハサミ型ナイフを用いて大腸ESDを行い良好な治療成績を報告してきたが、2024年4月より先端系ナイフを第一選択とした。ハサミ型ナイフに熟知した内視鏡医が先端系ナイフに切り替えた場合の治療成績を比較した検討はない。そこで今回我々は当院における大腸ESDの治療成績に関してハサミ型ナイフを用いた場合と先端系ナイフを用いた場合で比較検討し、デバイスの違いでの治療成績の違いを明らかにする。【方法】対象は2025年2月までに当院でESDを施行した740病変687症例 (男性389例; 平均70.3歳)のうち、中断・デバイス併用・肛門管病変を除き、ハサミ型ナイフを使用した678病変 (S群)と先端系ナイフを使用した43病変 (N群)に分類した。検討項目は一括切除率、完全一括切除率、治癒切除率、切除時間、切除スピード (1分あたりの切除面積)および偶発症発生率で、これらを腫瘍径、局在、病型を共変量としたプロペンシティスコアマッチング (PSM)法を使用し背景を整えた上でS群およびN群とで比較検討した。【成績】PSM後の対象は各群43病変となり、平均腫瘍径はS群: 33.6mm、N群: 30.2mm (p=0.18)、平均切除径はS群: 38.3mm、N群: 38.7mm (p=0.89)であった。一括切除率はS群: 100% (43/43)、N群: 100% (43/43)、完全一括切除率はS群: 97.7% (42/43)、N群: 100% (43/43)、治癒切除率はS群: 88.4% (38/43)、N群: 95.3% (41/43)でありいずれも両群間で有意差は認めなかった。高度線維化はいずれの群でも7.0% (3/43)であった。牽引法併用はS群: 32.6% (14/43)、N群: 41.9% (18/43)であり両群間で有意差は認めなかった (p=0.50)。平均切除時間はS群: 66.7±42.8分、N群: 54.3±30.7分 (p=0.13)、平均切除スピードはS群: 17.0±9.3 mm2/分、N群: 20.9±11.2 mm2/分 (p=0.08)でありN群で速い傾向にあった。偶発症は後出血を各群1例 (2.3%)ずつに認めたが、術中穿孔および遅発性穿孔はいずれの群でも認めなかった。【結論】ハサミ型ナイフに熟知した内視鏡医が初学である先端系ナイフを使用しても大腸ESDは安全で良好な成績であり、ハサミ型ナイフより術時間の短縮が期待できる。