講演情報

[R15-5]内視鏡治療後追加治療適応の早期直腸癌に対するCRTの経験と検討

杉山 雅彦1,2,3,4, 横溝 玲奈1, 寺師 宗秀1, 大西 恵美2, 古賀 直道1, 村木 俊夫3, 冨野 高広2, 栗原 健2, 笠木 勇太1, 岩永 彩子1, 宮坂 光俊3, 木村 和恵1, 杉町 圭史2, 中島 孝彰4, 國武 直信4, 森田 勝1 (1.国立病院機構九州がんセンター消化管外科, 2.国立病院機構九州がんセンター肝胆膵外科, 3.国立病院機構九州がんセンター消化管・内視鏡科, 4.国立病院機構九州がんセンター放射線治療科)
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【はじめに】内視鏡的切除された大腸癌の追加治療は、次の項目に該当する場合:組織学的検索でSM浸潤度1000μm以上、脈管侵襲陽性、低分化腺癌などの存在、budding2以上、分割切除、に対して大腸癌治療ガイドラインにてリンパ節郭清を伴う追加切除術が推奨されている。一方で腫瘍が下部直腸に位置する場合、術式によって肛門温存が不能となる、あるいは温存し得ても肛門機能の低下が生じる可能性がある。また骨盤深部の侵襲を伴う手術となるため一定の耐術能が必要である。これらの問題点のため手術を拒否する患者も存在する。NCCNガイドラインでは追加治療としてCRTが手術に併記されており、当科では手術を適応しない患者に対してNCCNガイドラインに準じてCRTを施行している。
【目的】当院における内視鏡治療後追加治療適応としてのCRTの治療成績を報告する。
【対象】2018年より2024年までに内視鏡治療後追加治療適応となった直腸癌症例22例のうちCRTは6例、標準的な手術を施行した症例はであった。放射線治療は45Gy/28Fr、多分割照射、症例によってIMRTを適応し、薬物療法はカペシタビン825㎎/m2/回にて施行した。
【結果】平均年齢はCRT群63.5歳(57-74)、手術群65歳(42-74)。ECOG-PSはCRT群でPS低下症例が有意に多かった(50%vs6%; p=0.045)。CRTを選択した理由は本人希望が3例、PS低下と過去の骨盤内手術歴が1例、脳性麻痺によるPS低下が1例であった。有害事象として3例にGrage1の下痢、糜爛、食思低下をそれぞれ認めた。手術群の術式は1例が直腸切断術にて永久ストマとなり、5例が一時的ストマを要する低位前方切除術または括約筋間直腸切除術、その他の症例は一時的ストマを要さない前方切除術であった。CRT群の1例(17%)に治療後1年目の肺転移を認め、手術群の4例(25%)に切除標本中の腫瘍残存またはリンパ節転移を認めた。22例における再発または癌遺残のリスク因子は追加切除適応項目数が2個以上となる場合であった(項目数1:0%、項目数2以上:36% p=0.020)。
【考察と結論】内視鏡治療後追加治療適応の早期直腸癌に対するCRTは有用である可能性が得られた。本邦においてJCOG1602試験が進行中であり結果が待たれる。