講演情報
[R16-2]血栓性外痔核の外観を呈した肛門部乳頭状汗腺腫の1例
蓮田 慶太郎 (社会医療法人愛育会福田病院肛門外科)
(はじめに) 外陰部、肛門部に発生する乳頭状汗腺腫は比較的まれな良性疾患であり、特に肛門部の症例は報告例が少ないため、痔核、痔瘻、ウイルス性疾患等との鑑別が重要になる。今回、術前に血栓性外痔核と診断され、術後、乳頭状汗腺腫と病理診断された症例を経験したので報告する。(症例)50歳女性 (既往歴)12歳時、虫垂切除術、46歳時、子宮筋腫 (出産歴) 2回、25歳時と27歳時 (現病歴)4週間前に肛門部の腫瘤に気づき当院を受診した。腫瘤は肛門縁より1cm外側の7時方向に認められ、大きさ1cm、楕円形、硬、表面平滑、可動性良好、皮膚に覆われ、血栓性外痔核様の外観であった。局所麻酔にて切除を行い、摘出した腫瘤に対して病理組織検査をおこなった。(病理診断)真皮内に嚢胞構造が認められ、その中に上皮と線維性間質が葉状分葉状構造、管状構造、乳頭状構造をとって充実性に増殖していた。上皮はアポクリン腺上皮細胞と筋上皮細胞の細胞2相性を示す像が基本であった。乳腺に発生する乳管内乳頭腫に類似した組織像であり、乳頭状汗腺腫と診断された。切除断端は陰性で、術後1年経過し、局所再発を認めていない。(まとめ)まれな肛門部乳頭状汗腺腫を経験した。乳頭状汗腺腫は、外陰部、肛門周囲の乳腺様腺組織(anogenital mammary-like gland (AGMLG))を母地として発生する良性腫瘍であるが、まれに悪性例の報告もあり、腫瘤の完全摘出と病理組織検査が必要である。