講演情報

[R16-6]肛門科クリニックを受診した肛門クラミジア感染症例の検討

吉田 幸平1, 樽見 研2 (1.新宿おしりのクリニック, 2.樽見おしりとおなかのクリニック)
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【背景】
性器クラミジア感染症は,クラミジア(Chlamydia trachomatis)が性行為により感染し、一般に男性では尿道炎と精巣上体炎を,女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症する.
クラミジアが肛門に感染すると肛門症状として排便時出血や掻痒感を呈することがある.そのため,それらを主訴に肛門科を受診する患者が一定数いる.今回,当院で診断し治療を行なった直腸クラミジア感染患者について報告する.
【対象】
2021年10月から2025年3月までの3年6ヶ月に当院で治療した直腸クラミジア感染患者15例を対象とし,それぞれの特徴について検討した.
【結果】年齢は21歳-49歳(中央値31歳).男性は12名で,女性は3名であった.全男性に肛門性交歴があった.無症候性感染者は4名だった.いくら状粘膜を認めた患者は6例だった.排便時出血を認めた患者は7例で,掻痒感を認めた患者は5例だった.全症例抗菌薬の内服で完治した.
【考察】
無症候性感染は患者本人が検査を希望し,偶然発見できたため,全て拾い上げることは困難である.
排便時出血を認める症例は,全例直腸にいくら状粘膜を呈していた.診断の際には直腸部にリンパ濾胞増殖症・リンパ濾胞炎を呈する疾患が鑑別に挙がり,リンパ腫の特殊型であるMLP(multiple lymphomatous polyposis),直腸顆粒状隆起を呈する潰瘍性大腸炎やlymphoid follicular proctitisなどとの鑑別が必要である.クラミジア感染症は直腸擦過物で診断をつけることが出来るため,患者への侵襲が少なく,疑う場合は積極的に検査をしていくべきだと考える.
【結語】肛門鏡にていくら状粘膜などを発見することは可能であるため,排便時出血や肛門の掻痒感を主訴に受診する患者の中にクラミジア直腸炎の患者がいることを念頭において肛門診察にあたることが大切である.