講演情報

[R18-1]当科におけるロボット支援下直腸癌手術の術者育成と短期成績の推移

大野 陽介, 市川 伸樹, 吉田 雅, 柴田 賢吾, 今泉 健, 佐野 峻司, 武冨 紹信 (北海道大学消化器外科)
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【背景】直腸癌に対するロボット支援下手術は急速に普及している。ロボット支援下手術は、その特性からも手術手技の再現性が高く、安全かつ根治性の高い手術の普及に向けた術者育成に有用と考える。
【目的】導入初期から現在までの直腸癌のロボット支援下手術の短期成績の検討から、当科での直腸癌に対するロボット支援下手術の定型化の取り組みについて考察する。
【方法】初回症例〜2021年3月までの導入期を1期、術者を内視鏡外科学会技術認定取得後としていた2021年4月〜2024年3月までを2期、術者の制限をなくした2024年4月〜2025年3月までを3期として、各期間の短期成績を比較する。使用機材は、Da Vinch Xiでdual consoleを使用している。
【結果】症例は189例で、1期:74症例、2期:84症例、3期:31症例であった。年齢、性別、術前T因子、術前N因子、術前Stage、腫瘍部位の患者背景に有意差は認めなかった。術前治療(CRT:TNT)について、1期:4例(5.4%)/0例、2期:18例(21.4%)/4例(4.7%)、3期:0例/12例(38.7%)と有意差を認めた。(p<0.01) 術式(HAR/LAR/sLAR/APR/Hartmann手術)は1期:6/51/1/13/3、2期:8/52/4/14/6、3期:6/16/3/6/0、側方郭清(なし:片側:両側)は1期:67/6/1、2期:76/6/2、3期:26/4/1で有意差を認めなかった。手術時間は中央値で1期:290分、2期:343分、3期:317分と有意差を認めた。(p<0.01) 術後30日以内のClavien-Dindo分類Grade3以上の合併症は7例(9.4%)/5例(6%)/0例(0%)で有意差は認めなかった。Stage4症例を除いたR0切除率は3.4%/4.0%/3.7%で有意差を認めなかった。
【考察】当科での直腸癌に対するロボット支援下手術は導入期から現在まで術者の育成を行いながら安定した手術成績であった。2期にて手術時間延長認められたが、術前治療症例の増加によるものと考えられる。3期においてはTNT症例の増加にもかかわらず短縮傾向にあり手術手技の習熟によるものと考える。現在、術者6名体制で行なっているが、安定した手術成績の中での術者育成が行えたものと考える。
【結語】直腸癌に対するロボット支援下手術の短期成績の推移について検討した。今後もロボット手術の特徴を活かした若手術者教育に努めたい。