講演情報

[R18-2]当院でのロボット大腸手術における若手教育の工夫

福岡 達成1, 谷 直樹1, 丸尾 晃司1, 江口 真平1, 瀬良 知央1, 田島 哲三1, 濱野 玄弥1, 西村 潤也1, 笠島 裕明2, 井関 康仁1, 長谷川 毅1, 村田 哲洋1, 澁谷 雅常2, 西居 孝文1, 櫻井 克宣1, 高台 真太郎1, 久保 尚士1, 清水 貞利1, 前田 清2, 西口 幸雄1 (1.大阪市立総合医療センター, 2.大阪公立大学消化器外科学)
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【背景】
近年、結腸癌に対するロボット支援下手術は急速に普及しており、その高精細な3D視野、多関節機構による精緻な操作性は、安全かつ低侵襲な手術の実現に寄与している。一方で、ロボット手術の拡大に伴い、若手外科医の執刀機会が増加しているにもかかわらず、初期研修段階における開腹・腹腔鏡手術の経験機会は減少しており、体系的な教育体制の整備が急務である。
【目的】
本研究では、初期若手外科医の教育を目的とし、ロボット支援下右側結腸切除術において、ロボットSurgeon(RS)とLaparoscopic Surgeon(LS)が協調して施行する術式をビデオ提示し、その教育的有用性と手術手技の安全性・効率性について考察する。
【手術手技】
本術式は、**Cranial(頭側)→Inferior(後腹膜)→Medial(内側)Approach(CIMA)**による右半結腸切除を基本とし、MCA周囲リンパ節郭清を含む根治術を目指す。ポート配置は逆L字型の6ポート全てにda Vinciポートを使用する。
頭側アプローチ:LSが左側腹部ポートから超音波凝固切開装置を操作し、肝彎曲部の授動および大網切離を行う。
後腹膜アプローチ:RSが主導して後腹膜剥離を進め、右結腸の側腹壁からの授動を完了する。
内側アプローチ:LSが左下腹部ポートにスイッチし、ロボットアームの干渉を回避しつつ、RSと協働でMCA周囲郭清を実施する。剥離・切離操作はRSとLSが交互に担い、術野の明確化と出血リスクの最小化に寄与する。
腸間膜の切離はRSが展開、LSが切離を行い、最終的な吻合操作もLSが自動縫合器を用いて行う。すべての工程において、両者の明確な役割分担と協調が術式の再現性を高めている。
【結語】
本術式は、ロボット手術におけるRSとLSの協調によって、教育的意義と安全性を両立させた新たな教育モデルを提示するものである。ロボット技術の進展が外科医のキャリア持続に貢献する一方で、外科教育においては若手医師が段階的に手術に関与できる環境整備が不可欠である。本手法は、今後の消化器外科教育において実践的かつ有効な指導戦略の一助となると考えられる。