講演情報
[R19-1]Stage4結腸癌に対する原発切除の安全性(多施設共同データベースK-SEERの解析から)
浅田 祐介1,2, 水野 翔大2, 亀山 哲章2, 菊池 弘人3, 岡林 剛史4, 北川 雄光4, 池畑 泰行1, 宮田 敏弥1, 浅古 謙太郎1, 福島 慶久1, 端山 軍1, 野澤 慶次郎1, 深川 剛生1, 落合 大樹1 (1.帝京大学医学部外科学講座, 2.荻窪病院外科・消化器外科, 3.川崎市立川崎病院一般・消化器外科, 4.慶應義塾大学医学部外科学教室(一般・消化器外科))
【背景】
Stage4大腸癌に対する原発切除ではStage3以下と比較して安全性、主には合併症の多さが懸念され、遠隔転移切除不能例における原発非切除を支持する主要な根拠にもなっている。しかしこれを検証した報告は乏しく、特に一般的に手術が容易な結腸癌では議論の余地がある。
【目的】
Stage4結腸癌に対する原発切除の短期成績をStage3以下と比較することでその安全性を検証する。
【方法】
「関東域内の大腸癌手術症例に対する多施設共同研究グループ」のデータベース(K-SEER)を後方視的に解析した。2015~2017年に17施設から5045例が登録されており、このうち緊急手術、多臓器切除、多重癌、術前の減圧や化学療法などを除外した結腸癌(主座がA/T/D/S)の2140例を対象とした。Stage4が150例(7%)、Stage3以下が1990例(93%)であり、両群の短期成績を比較した。主要評価項目を重大合併症(Clavien-Dindo Grade 3以上)、副次評価項目を全合併症、縫合不全、手術関連死亡とした。
【結果】
患者背景ではStage4で有意に若年(70 vs 72歳、p=0.04)かつBMIが低かった(22.0 vs 22.4、p=0.03)。その他の主たる因子に差は認めなかった。術式ではStage4で有意に開腹術(45 vs 21%)、D1以下の郭清(15 vs 4.4%)、ストーマ造設(11 vs 1.9%)が多かった(いずれもp<0.001)。重大合併症は全体の6.3%(134例)に発生し、Stage4で有意に高率であった(11 vs 5.9%、p=0.02)。多変量解析でもStage4は男性(OR 1.59、95%CI 1.10-2.31、p=0.01)、開腹術(OR 1.73、95%CI 1.17-2.56、p=0.006)とともに重大合併症の独立した危険因子であった(OR 1.83、95%CI 1.03-3.25、p=0.04)。手術関連死亡もStage4で有意に多かったが(1.3 vs 0.15%、p=0.004)、全合併症(22 vs 21%)と縫合不全(2.7 vs 2.9%)の発生率に差は認めなかった。なお、手術時間はStage4で有意に短かった(188 vs 202分、p=0.04)。
【結語】
Stage4結腸癌に対する原発切除ではStage3以下と比較して短時間で郭清を手控え、かつストーマ造設といった安全策が講じられていたが、それでも重大合併症が多かった。いわゆる「さら取り」でも適応は熟慮を要する。
Stage4大腸癌に対する原発切除ではStage3以下と比較して安全性、主には合併症の多さが懸念され、遠隔転移切除不能例における原発非切除を支持する主要な根拠にもなっている。しかしこれを検証した報告は乏しく、特に一般的に手術が容易な結腸癌では議論の余地がある。
【目的】
Stage4結腸癌に対する原発切除の短期成績をStage3以下と比較することでその安全性を検証する。
【方法】
「関東域内の大腸癌手術症例に対する多施設共同研究グループ」のデータベース(K-SEER)を後方視的に解析した。2015~2017年に17施設から5045例が登録されており、このうち緊急手術、多臓器切除、多重癌、術前の減圧や化学療法などを除外した結腸癌(主座がA/T/D/S)の2140例を対象とした。Stage4が150例(7%)、Stage3以下が1990例(93%)であり、両群の短期成績を比較した。主要評価項目を重大合併症(Clavien-Dindo Grade 3以上)、副次評価項目を全合併症、縫合不全、手術関連死亡とした。
【結果】
患者背景ではStage4で有意に若年(70 vs 72歳、p=0.04)かつBMIが低かった(22.0 vs 22.4、p=0.03)。その他の主たる因子に差は認めなかった。術式ではStage4で有意に開腹術(45 vs 21%)、D1以下の郭清(15 vs 4.4%)、ストーマ造設(11 vs 1.9%)が多かった(いずれもp<0.001)。重大合併症は全体の6.3%(134例)に発生し、Stage4で有意に高率であった(11 vs 5.9%、p=0.02)。多変量解析でもStage4は男性(OR 1.59、95%CI 1.10-2.31、p=0.01)、開腹術(OR 1.73、95%CI 1.17-2.56、p=0.006)とともに重大合併症の独立した危険因子であった(OR 1.83、95%CI 1.03-3.25、p=0.04)。手術関連死亡もStage4で有意に多かったが(1.3 vs 0.15%、p=0.004)、全合併症(22 vs 21%)と縫合不全(2.7 vs 2.9%)の発生率に差は認めなかった。なお、手術時間はStage4で有意に短かった(188 vs 202分、p=0.04)。
【結語】
Stage4結腸癌に対する原発切除ではStage3以下と比較して短時間で郭清を手控え、かつストーマ造設といった安全策が講じられていたが、それでも重大合併症が多かった。いわゆる「さら取り」でも適応は熟慮を要する。