講演情報

[R19-2]当院における肝転移単独の切除可能病変を有するStage IV直腸癌に対する治療戦略とその治療成績

松井 信平, 野口 竜剛, 坂本 貴志, 向井 俊貴, 山口 智弘, 秋吉 高志 (がん研究会有明病院)
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【はじめに】
肝転移を有する大腸癌は切除可能であれば根治切除を施行するのが第一選択である。しかし、肝転移でも予後不良群が存在する。また、局所進行直腸癌に対して、海外では術前化学療法(NAC)・術前放射線治療(NART)が標準治療である。当院では、同時性肝転移直腸癌に対しては、肝転移巣に対して一定の判断基準(転移個数、転移腫瘍径、腫瘍マーカー)を用いながら、原発巣の腫瘍進行状況に応じて、術前治療を行っており、その治療成績について検討した。
【対象と方法】
2004年から2021年までの間に、当院でR0手術を施行できた、遠隔転移が肝転移のみの直腸癌Stage IVの患者、120名(Ra:58例、Rb以下:62例)を対象とし、術前治療の有無による治療成績について解析した。
【結果】
120例の原発巣深達度は、cT2:5例、cT3:82例、cT4:33例であった。78例はNACを施行され、42例がNARTを施行され、38例がどちらの治療も受けていた。原発巣肝転移巣同時切除は94例に施行し、治療的側方リンパ節郭清は33例に施行していた。NAC施行群は、診断時、肝転移個数・肝転移最大径・腫瘍マーカーは有意に高く、肝転移garadeはNAC群(H1:27例、H2:26例、H3:25例)、非NAC群は(H1:26例、H2:11例、H3:5例)で、NAC群で高度肝転移であった。3年死亡率は、NAC群19.2%、非NAC群11.9%であったが、有意差は認めなかった(p=0.19)。また、3年再発率は、NAC群67.9%、非NAC群66.7%で、同様に有意差は認めなかった(p=0.88)。残肝再発は、NAC群44.4%、非NAC群52.6%で、同様に有意差は認めなかった(p=0.82)。
【結語】
切除可能ではあるが再発高リスクの肝転移病変に対する、術前化学療法はその予後を改善する改善する可能性がある。