講演情報

[R2-1]淡明細胞型腎細胞癌に腫瘍内転移をきたした上行結腸癌の1 例

豊福 篤志, 櫻井 晶子, 伊波 悠吾, 本田 晋策, 村山 良太, 北原 光太郎, 黒田 宏昭, 崎田 健一, 永田 直幹 (北九州総合病院)
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重複腫瘍症例において一方の腫瘍が他方の腫瘍内に転移する腫瘍内転移は稀である.腫瘍内転移において他腫瘍内へ転移する側の腫瘍をdonor tumor,腫瘍内に転移される側の腫瘍をrecipient tumor と表現される.諏訪らによると,donor tumor としては肺癌,腎癌,乳癌,悪性黒色腫の順で多いとされ,recipient tumor としては中枢神経系腫瘍,甲状腺腫瘍,腎腫瘍の順で多いと報告されている.腫瘍内転移においてdonor tumor が結腸癌もしくは直腸癌であった症例はさらに稀であり,1972 年から2023年の範囲で医学中央雑誌,PubMed にて検索したところ26 症例のみであった.

症例は77 歳の女性で,202X年5 月に高血圧に対する治療を開始するために近医クリニックを受診した.胸部レントゲンにて右肺結節陰影を指摘され, 6 月に当院に紹介となった.精査の結果,転移性肺癌を伴う上行結腸癌,UICC(# 8 )Stage ⅣA に加え,右腎癌,UICC(# 8 )StageⅠの重複癌の診断であった. 8 月,腹腔鏡下右半結腸切除術+右腎摘出術を施行した.腎癌は最大径31mm の淡明細胞型腎細胞癌の組織型であったが,興味深いことにその腫瘍内に上行結腸癌の転移病変を認めた.転移性肺癌に対して全身化学療法を施行後,12 月に胸腔鏡下右肺下葉切除術を施行した.腫瘍内転移は転移先の腫瘍内部に転移元の腫瘍が存在する稀な現象である.今回われわれは,腎癌に腫瘍内転移をきたした上行結腸癌の1 例を経験し,検索された26症例に本症例を加え,考察し報告する.