講演情報
[R2-4]当院におけるHIV感染合併肛門扁平上皮癌7例の検討
宇野 泰朗, 服部 正嗣, 羽田 拓史, 袴田 紘史, 梅村 卓磨, 田中 健太, 冨永 奈沙, 田嶋 久子, 多代 充, 末永 雅也, 小寺 泰弘 (国立病院機構名古屋医療センター)
【はじめに】肛門扁平上皮癌は稀だが、標準治療として化学放射線療法(CRT)が確立している。高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染は肛門癌の危険因子の一つであり肛門癌の84%に高リスクHPVが検出されるともいわれている。男性同性間性的接触者においては肛門にHPVを感染することが多い。当院は地域のエイズ診療拠点病院としてHIV感染者の診療も多く、HIV感染合併の肛門扁平上皮癌について検討した。【対象と方法】2005年4月から2025年3月までの間に当院で治療した肛門扁平上皮癌のうちHIV感染を合併している7例につき、患者背景、腫瘍学的背景、予後について後方視的検討を行った。【結果】7例の患者背景は年齢中央値49歳(35-71歳)、男女比7:0であった。HIV感染判明から肛門扁平上皮癌の診断までの期間は中央値1年(0-16.5年)、尖圭コンジローマの治療歴は術7例中3例に認めた。部位は肛門管が5例(うち2例は痔瘻癌)、肛門皮膚が2例であった。6例は局所手術が行われて診断がついており、2型の腫瘍を認めた1例のみ生検で診断後にCRTとなっている。組織型は全例Squamous cell carcinomaであるが、ハイリスクHPVの存在は3例に確認されている。深達度はTis/T1/T2/T3:1/4/1/1、リンパ節転移を認めたものはなかった。局所切除後2例はCRTが追加され、1例はRTのみ追加され、1例は追加局所切除、その他の2例は経過観察となっていた。CRTの化学療法は2例が5FU+MMCで1例は5FU+CDDPであった。観察期間の中央値は3.67年(1-11年)で、局所切除のみで経過観察していた1例は、3年9ヶ月後に局所再発してCRT施行中であるが、他は再発していない。【考察】HIV感染合併の肛門扁平上皮癌のCRT治療成績は、非感染例と比べて同等という報告もあれば、成績が悪いという報告もある。HIV感染例では尖圭コンジローマの合併が多く、肛門病変のフォローがされている場合も多い。前癌病変である高度扁平上皮内病変(HSIL)の状態で早期発見できる場合も多く、適切な肛門病変フォローが肝要である。【結語】当院のHIV感染合併肛門管扁平上皮癌につき検討した。治療成績は認容される結果であるが、今後も症例の蓄積により更なる検討が必要である。