講演情報
[R2-6]大腸狭窄と大腸穿孔で診断された2例のEpstein–Barr virus陽性mucocutaneous ulcer(EBV-MCU)の報告
嶋田 通明, 森川 充洋, 五井 孝憲 (福井大学第一外科)
Epstein–Barr virus陽性mucocutaneous ulcer(EBV-MCU)は,2016年にWHOのリンパ系腫瘍分類で正式に定義された,免疫力低下と関連が示唆される成熟B細胞リンパ腫の新しいカテゴリーである.免疫力低下の原因としては,原発性免疫不全症候群,後天性免疫不全症候群,医原性の免疫抑制,加齢などが考えられている.大腸EBV-MCUの切除報告は本邦で3例と限られているが,我々は大腸狭窄と穿孔で手術した2例にてEBV-MCUと診断された.貴重な症例と考え報告する.
症例①78歳女性.以前より排便障害で加療を受けており,下部消化管内視鏡で上行結腸に局所的な狭窄病変が認められた.生検の結果はGroup 1であったが,腹部造影CT検査で限局性壁肥厚と近傍リンパ節腫大が確認された.鑑別診断は憩室炎による良性結腸狭窄,結腸リンパ腫,上行結腸癌が挙げられ,確定診断を得るため腹腔鏡下結腸右半切除術・D2を施行した.病理にて狭窄部位にEBV陽性B細胞が濾胞胚中心に高率に認められ,EBV-MCUと診断された.術後1年4か月が経過した現在,CT検査および下部消化管内視鏡で再発所見は認められず,EBV-MCUの診断に矛盾しないと考えられる.
症例②71歳女性.重症筋無力症と関節リウマチのためステロイドと免疫抑制剤を内服.2週間前からの下腹部痛が徐々に悪化し来院した.腹膜刺激徴候を伴い,CT検査でfree airと腹水を認め,消化管穿孔と診断した.緊急開腹手術にて横行結腸に穿孔部1か所を認め,前後10cmを切除した.腸管内腔には境界明瞭な潰瘍が数個みられたため,吻合は回避し人工肛門を造設した.病理診断はB-cell lymphoma/lymphoid proliferationであり,病変が横行結腸に限局するのであればEBV-MCUが考えられるとの結果であった.術後3カ月での下部消化管内視鏡では粘膜潰瘍は改善しており,術後1年時点のCT検査でもリンパ節増大は認めておらずEBV-MCUに矛盾しないと考えられる.
症例①78歳女性.以前より排便障害で加療を受けており,下部消化管内視鏡で上行結腸に局所的な狭窄病変が認められた.生検の結果はGroup 1であったが,腹部造影CT検査で限局性壁肥厚と近傍リンパ節腫大が確認された.鑑別診断は憩室炎による良性結腸狭窄,結腸リンパ腫,上行結腸癌が挙げられ,確定診断を得るため腹腔鏡下結腸右半切除術・D2を施行した.病理にて狭窄部位にEBV陽性B細胞が濾胞胚中心に高率に認められ,EBV-MCUと診断された.術後1年4か月が経過した現在,CT検査および下部消化管内視鏡で再発所見は認められず,EBV-MCUの診断に矛盾しないと考えられる.
症例②71歳女性.重症筋無力症と関節リウマチのためステロイドと免疫抑制剤を内服.2週間前からの下腹部痛が徐々に悪化し来院した.腹膜刺激徴候を伴い,CT検査でfree airと腹水を認め,消化管穿孔と診断した.緊急開腹手術にて横行結腸に穿孔部1か所を認め,前後10cmを切除した.腸管内腔には境界明瞭な潰瘍が数個みられたため,吻合は回避し人工肛門を造設した.病理診断はB-cell lymphoma/lymphoid proliferationであり,病変が横行結腸に限局するのであればEBV-MCUが考えられるとの結果であった.術後3カ月での下部消化管内視鏡では粘膜潰瘍は改善しており,術後1年時点のCT検査でもリンパ節増大は認めておらずEBV-MCUに矛盾しないと考えられる.