講演情報

[R20-1]馬蹄腎を併存した子宮体癌上行結腸転移に対し蛍光尿管カテーテル併用腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した1例

四元 拓宏, 近藤 彰宏, 馮 東萍, 竹谷 洋, 松川 浩之, 西浦 文平, 安藤 恭久, 須藤 広誠, 岸野 貴賢, 大島 稔, 隈元 謙介, 岡野 圭一 (香川大学医学部附属病院消化器外科)
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【はじめに】馬蹄腎は両側腎が下極で癒合する先天性の合併奇形であり、0.25%の頻度で存在すると報告されている。血管系や腎盂尿管系に走行異常を伴うことが多く,大腸癌手術においては副損傷に注意する必要がある。今回、馬蹄腎を併存した子宮体癌上行結腸転移に対し蛍光尿管カテーテル併用腹腔鏡下手術を施行した症例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。
【症例】61歳女性。27年前に子宮体癌に対し広汎子宮全摘術が施行され当院婦人科で外来フォロー中であった。CA125の上昇を認め下部消化管内視鏡検査を施行したところ、上行結腸に50mm大の5型腫瘍を認め、生検の結果子宮体癌からの転移を疑う所見であった。造影CT検査で馬蹄腎併存であることが確認された。上行結腸以外に明らかな再発転移を疑う腫瘍性病変は認めなかったため外科的切除の方針となり、蛍光尿管カテーテル留置の上で腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した。BMI 39と高度肥満を認めていたこと、前回手術の影響で骨盤内に広範囲な小腸の癒着を認めていたことから手術操作は時間を要した。手術時間は379分、出血量は少量であった。術後経過は良好で10日目に自宅退院となった。病理組織学的・免疫学的所見としてエストロゲン受容体及びプロゲステロン受容体が陽性であり、子宮体癌の上行結腸転移の診断となった。その後婦人科で全身化学療法が施行され、術後8か月現在再発転移なく経過している。
【考察】
馬蹄腎は、過剰腎動脈や尿路走行異常など解剖学的破格を伴うことが多いとされ副損傷には留意が必要であるが、蛍光尿管カテーテルは術中の明瞭な尿管走行認識に寄与し適切な剥離層維持が可能であった。適切な剥離層の確保は尿管だけでなく過剰腎動脈の損傷回避につながると考えられ、手術ビデオを供覧しつつその有用性を提示する。