講演情報

[R20-5]完全内蔵逆位を伴う直腸癌に対してロボット支援下直腸切除術を施行した1例

服部 正嗣, 宇野 泰朗, 松本 格, 羽田 拓史, 袴田 紘史, 梅村 卓磨, 田中 健太, 冨永 奈沙, 田嶋 久子, 多代 充, 末永 雅也, 小寺 泰弘 (国立病院機構名古屋医療センター)
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【緒言】完全内臓逆位は胸腹部臓器の全てが矢状面に対して鏡像的位置にある比較的まれな先天性疾患である。悪性腫瘍との併存の報告がされており、手術に際しては解剖学的認識に注意が必要である。ロボット支援下手術に際しては通常とは異なるポート配置、デバイスセッティングでの手術が求められる。完全内臓逆位症を伴う直腸癌に対してロボット支援下直腸切除術を行った1例について報告する。
【症例】症例は特に既往歴のない外国籍の60歳男性。日本在住の娘を訪ねて日本滞在中に下血を認め、近医で直腸癌と診断されて当院に紹介となった。直腸RS-Raに3/4周性の2型病変を認め、精査でT3N0M0 Stage IIaの直腸癌と診断された。また初めて完全内臓逆位を指摘された。逆位以外の血管走行異常を認めないことを確認し、da Vinci Xi surgical systemを用いたロボット支援下直腸切除術を行った。ロールインを患者右下から行い、ポートは通常の鏡像位置に配置し、アームは左下腹部外側に1番、左下腹部内側に2番、臍部ポートに3番、右上腹部に4番をセットし、左上腹部に助手ポートを配置した。3番にカメラを装着し、1番にTip-up フェネストレイテッドグラスパ、2番にフェネストレイテッドバイポーラ、4番にモノポーラシザースを装着した。下腸間膜動脈を根部で切離するD3リンパ節郭清を行った。骨盤内操作では2番にモノポーラシザース、4番にフェネストレイテッドバイポーラを装着して1番4番の両手で視野を展開し、直腸低位前方切除(TSME)を行いDST再建を行った。総手術時間は294分、コンソール時間は185分、出血は10mlであった。術後経過は良好で術後8日目に退院となった。
【考察】完全内臓逆位を伴う直腸癌に対する手術は鏡像的位置にポートを配置しデバイスのセッティングを工夫することで通常とほぼ同じ感覚で問題なく施行することが可能であった。完全内臓逆位を伴う直腸癌に対する手術の報告は散見されるが、ロボット支援下に手術を行った症例の報告はいまだ極めて少なく非常に貴重な症例であったと考えた。