講演情報
[R21-2]一時的回腸人工肛門の閉鎖術における創部感染の予防策
高 理奈, 松末 亮, 有宗 敬祐, 澤田 晋, 石田 薫平, 中西 望, 吉田 真也, 森野 甲子郎, 後藤 俊彦, 山本 道宏, 待本 貴文 (天理よろづ相談所病院)
【背景】
人工肛門閉鎖術の合併症のうち、創部感染は一般的に高頻度である。当科では以前、創部皮下へのドレーン挿入や巾着縫合閉鎖で感染対策としていたが、一定の確率で創部感染が生じていた。そこで感染対策を見直し、2022年10月より、SSI(Surgical Site Infection)対策として新たなバンドルを導入し、統一した。
【対象と方法】
2019年6月から2025年3月までに一時的回腸人工肛門造設後の閉鎖術を行なった60例を対象とした。2019年6月から2022年9月までの30例を前期群、2022年10月から2025年3月までの30例を後期群とした。前期群は皮下ドレーンの挿入や巾着縫合閉鎖で感染対策としていたが、術中の感染防御策や術後の抗菌薬投与期間に関して、統一された感染対策は行われていなかった。後期群はドレーンを使用せず、感染予防バンドルとして①術直前のストマ周囲を含む腹部の徹底的な消毒、②人工肛門の仮閉鎖、③術野シーツの交換、手術器具の交換、徹底的に清潔操作を意識した吻合、④閉創前の創部の入念な洗浄、⑤非吸収性のモノフィラメントによる垂直マットレス縫合での創閉鎖とし、これらを全症例に統一して行った。
【結果】
前期群は年齢47-87歳、男女比は3:2、手術時間の中央値107分、出血量の中央値5ml、周術期の抗生剤投与期間の中央値は3日であった。ドレーンを使用した症例は30例中23例で、その他7例は巾着縫合を行った。後期群は年齢47-88歳、男女比は2:1、手術時間の中央値107分、出血量の中央値5ml、周術期の抗生剤投与期間の中央値は0日であった。SSIの発生は、前期群が30例中4例(13%)だったのに対し、後期群は30例中0例(0%)であった。統計学的に両群間で有意差を認めなかったが、感染発症率は抑制された。さらに、SSIを認めた症例は全例皮下ドレーンを挿入しており、皮下ドレーンは創部感染予防に寄与しない可能性を示した。
【まとめ】
人工肛門閉鎖術後の創部感染対策として当科で導入したバンドルは、感染抑制の可能性があることが示された。また、皮下にドレーンを留置しなくても、これらの予防策を徹底すれば感染を予防することができると考えられた。
人工肛門閉鎖術の合併症のうち、創部感染は一般的に高頻度である。当科では以前、創部皮下へのドレーン挿入や巾着縫合閉鎖で感染対策としていたが、一定の確率で創部感染が生じていた。そこで感染対策を見直し、2022年10月より、SSI(Surgical Site Infection)対策として新たなバンドルを導入し、統一した。
【対象と方法】
2019年6月から2025年3月までに一時的回腸人工肛門造設後の閉鎖術を行なった60例を対象とした。2019年6月から2022年9月までの30例を前期群、2022年10月から2025年3月までの30例を後期群とした。前期群は皮下ドレーンの挿入や巾着縫合閉鎖で感染対策としていたが、術中の感染防御策や術後の抗菌薬投与期間に関して、統一された感染対策は行われていなかった。後期群はドレーンを使用せず、感染予防バンドルとして①術直前のストマ周囲を含む腹部の徹底的な消毒、②人工肛門の仮閉鎖、③術野シーツの交換、手術器具の交換、徹底的に清潔操作を意識した吻合、④閉創前の創部の入念な洗浄、⑤非吸収性のモノフィラメントによる垂直マットレス縫合での創閉鎖とし、これらを全症例に統一して行った。
【結果】
前期群は年齢47-87歳、男女比は3:2、手術時間の中央値107分、出血量の中央値5ml、周術期の抗生剤投与期間の中央値は3日であった。ドレーンを使用した症例は30例中23例で、その他7例は巾着縫合を行った。後期群は年齢47-88歳、男女比は2:1、手術時間の中央値107分、出血量の中央値5ml、周術期の抗生剤投与期間の中央値は0日であった。SSIの発生は、前期群が30例中4例(13%)だったのに対し、後期群は30例中0例(0%)であった。統計学的に両群間で有意差を認めなかったが、感染発症率は抑制された。さらに、SSIを認めた症例は全例皮下ドレーンを挿入しており、皮下ドレーンは創部感染予防に寄与しない可能性を示した。
【まとめ】
人工肛門閉鎖術後の創部感染対策として当科で導入したバンドルは、感染抑制の可能性があることが示された。また、皮下にドレーンを留置しなくても、これらの予防策を徹底すれば感染を予防することができると考えられた。