講演情報

[R21-4]ストーマ閉鎖部の腹壁瘢痕ヘルニアリスク因子の検討とヘルニア発症予防を目的とした閉腹法

柿澤 奈緒, 水澤 由樹, 松澤 夏未, 福井 太郎, 高山 裕司 (自治医大さいたま医療センター一般・消化器外科)
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【緒言】一時的ストーマの閉鎖は若手外科医が担当することが多い手術であるが、術後のストーマサイトヘルニアが生じると患者のQOLは低下し、修復手術を要する場合もある。
【方法】2013年から2023年に一時的ストーマ閉鎖を当院で行った症例で、ストーマサイトの腹壁瘢痕ヘルニア(SS-IH)のリスク因子を後方視的に検討し、また予防を目的とした閉腹法を紹介する。
【結果】185症例のうち、SS-IHは31例(17%)に発症した。そのうち2例にヘルニア修復手術が施行された。
1)リスク因子の検討;ASA3以上 (P=0.022)、DMあり (P=0.012)、正中創ヘルニア(ML-IH)あり (P<0.01)、創完全閉鎖 (P=0.015)、高齢 (P=0.013)、高BMI (P=0.014)が単変量解析での有意な因子であった。これらに、ASOまたはAAA既往あり (P=0.060)、SSIあり (P=0.12)を加えて多変量解析を行った。結果、70歳以上 (P<0.01)、ML-IH (P<0.01)、創完全閉鎖 (P=0.022)、BMI24以上 (P=0.016)がSS-IHの独立したリスク因子であった。
2)ストーマ閉鎖時の閉腹法;①腹膜のみを連続縫合する。②腹直筋前鞘を単結節縫合する。③創は完全閉鎖せずに小孔をあけSSI予防とする。2021年からこの閉腹法を15例に施行し、SS-IH発症は1例 (6.7%)であった。
【考察】SS-IHの発症には、患者側因子(高齢、肥満、基礎疾患)と手術因子(創閉鎖)が関与しており、発症リスクを検討して予防に努めることが重要である。