講演情報
[R22-2]インドシアニングリーン造影検査による縫合不全低減効果の検証
福井 太郎, 清水 友哉, 松澤 夏未, 高山 裕司, 柿澤 奈緒, 力山 敏樹 (自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科)
【背景】大腸癌手術での縫合不全の低減のため血流を評価するインドシアニングリーン(ICG)造影検査が普及し、大規模な臨床試験でその有用性が報告・検証されている。当院で2021年10月よりヨードアレルギー症例を除く多くの症例でICG検査を行っているが、縫合不全は一定数発生している。【対象・方法】2014年1月~2025年3月に当院で大腸癌手術症例を対象に縫合不全発生割合をICG検査導入前後で比較した。また、ICG検査下での縫合不全発生例の詳細を検証した。【結果】ICG検査の実行割合は76%であった。ICG検査導入前(2014年1月-2021年9月)の縫合不全は1.4%(22/1587)、導入後(2021年10月-2025年3月)は1.9%(12/625)で有意差は無かった(p=0.34)。ICG検査施行症例での縫合不全12例の背景因子・周術期因子を以下に示す(中央値(range))。年齢73.5歳(52-85)。男性11名、女性1名。病変占拠部位:下部直腸6例、直腸S状部2例、S状結腸2例、盲腸2例。Defunctioning Stoma(DS)造設併施2例(16.7%)。術前の小野寺のPrognostic Nutritional Index(PNI)38.9(30.4-50.3)。手術時間370分(252-654)。術中出血量75ml(0-2122)。術前スコープ不通過4例(33%)。併存症:糖尿病3例、脳梗塞2例、術前(放射線)化学療法施行3例、前立腺癌放射線治療歴1例、下腸間膜動脈再建を伴うAAA手術既往1例。【考察】当院では既報と比較し縫合不全が少なく、ICG検査導入前後で縫合不全の低減効果は認めなかった。縫合不全例ではPNIが低い症例が多く、術前の栄養介入により縫合不全を低減できる可能性が示唆された。術前治療施行症例が近年増加しており、重症化回避のため予定でのDS造設施行例でもドレーン管理のため入院が長期化していた。ICG検査という単一の介入での縫合不全低減は困難であり、複合的な対策が求められる。